なぜ赤字になる?経営難を防ぐ!放課後等デイサービスの運営ノウハウ
今回は放課後等デイサービスの赤字経営に陥るオーナーの事例をもとに、適切な事業所の運営方法を探っていきます。
経営難に陥る理由の1つは、給付費や税金に対する誤解です。
たとえば・・・
- 「放課後等デイサービスは給付費で賄われる福祉事業だから、景気に左右されず安定している」
- 「税制優遇が受けられ、ほかの事業よりお得」
と考え、事業所を開所してしまうケースです。
これらは正しい認識ではありません。中途半端な知識のまま経営を始めることで集客や収益確保のチャンスを逃します。
さらにコストだけが膨れ上がり、気づけば赤字から抜け出せない状態にまで悪化するのです。
正しく運営するためには、次の3点が求められます。
- 給付費の仕組みを理解し、損をしない知識を身につける
- 給付費は報酬改定で変化することを理解し、法改正に対応する
- 運営にかかる経費を知り、抑える経費とかけるべき経費の徹底管理をする
本稿では、放課後等デイサービスで赤字経営に陥らないための運営方法を給付金や報酬改正、経費のポイントをお伝えします。
すべての知識やノウハウを短期間で身につけるのは困難です。失敗を避けるには、経験豊富なフランチャイズ事業への加盟をおすすめします。
こどもプラスでは、児童福祉法など運営に必要な法律に精通したスタッフが、最新の報酬改定に対応した運営方法や、効果的な集客方法、経費の管理方法などを丁寧に伝授します。
想定していなかったことで赤字経営に陥らないよう、本稿をお役立てください。
1.放課後等デイサービスで赤字経営になる事業所・オーナーの特長
放課後等デイサービス(以下、放デイ)の経営に失敗しない第一歩は、赤字に陥る事業所の特色や理由を知ることです。
開所すぐ経営難になる事業所やオーナーには以下の特長があります。
<赤字に陥るオーナーの特長>
・放デイの給付金や税金の正しい知識を持っていない。もしくは誤った理解をしている。 ・「放デイは給付費が収入源なので安定している」「非課税で税制優遇されている」といった甘言に釣られ開業してしまう ・本来は取得できる加算を取得していない。あるいは取得できることを知らない |
給付金は無条件で下りるわけではなく、一切の税金を払わずに済むわけでもありません。
正しい知識を持たずに運営を開始すると「こんなはずではなかった」の連続になります。
知識の不足は、せっかくの「稼げるチャンス」を無駄にする可能性もあります。
この章では赤字経営に陥る事例をもとに、給付金や加算の正しい知識を伝授します。
1-1.「非課税×給付費」で成り立つ安定したビジネスと思って開業してしまう
放デイは一般企業を取引先としないため、取引先の経営状況に左右されることがありません。
売上金の未収が起きないので「安定したビジネス」だと言われています。しかし、集客ができなければ経営が安定することはありません。利用者が集まるかは営業力次第です。
また「放デイ=非課税」というイメージを強く持たれますが、税金が課されないのは消費税だけです。法人税は免税になりません。
1-1-2.給付費は単位制で利用児童数と職員(資格保持者)の配置で決まる
放デイの収益の仕組みを理解するには、給付費の知識が必要です。給付費は単位制で、以下の計算で一日の収益が決定します。
「一日児童一人あたりの単位数」×「地域単価(10円〜)」×「人数」
一日児童一人あたりの単位数は、「基本報酬+加算単位数」で成り立ちます。定員10名以下の教室の場合、児童一人あたりの基本報酬単位は以下のとおりです。
- 平日:604単位
- 学校休業日:721単位
ここに職員の配置や提供するサービスに応じた加算が行われます。
多くの教室で取得されているのが「児童指導員等加配加算」の123単位(児童指導員等)です。保育士を加配できる場合は187単位を取得できます。また、児童の送迎も加算が得やすく、往復で108単位が加算されます。
- 平日:604単位+123単位+108単位=835単位(保育士加配の場合は899単位)
835単位×10円(地域単価)=8,350円(保育士加配の場合は8,990円) - 学校休業日:721単位+123単位+108単位=952単位(保育士加配の場合は1016単位)
952単位×10円(地域単価)=9,520円(保育士加配の場合は10,160円)
こちらが児童一人あたりの売上で、この金額にその日の利用児童数を乗じたものが教室の収益です。したがって、
- 極力多くの児童に通所してもらうこと
- 加配加算を取得できるよう、職員配置に留意すること
が大切です。
保育士など有資格者を雇うことで加算が大きくなるため、人材募集時に優先的に雇用すると良いでしょう。
1-2.本来は取れるべき加算を取れていない
児童一人あたりの単価を上げるには、加算の取得が必須です。
前節でご紹介した「児童指導員等加配加算」は、配置人員を増やすだけでよいため、最も簡単に取得できる加算の一つです。
取得条件は「児童福祉法で規定された人数を配置した上で、サービスの質の向上や余裕ある療育のために職員を加配する場合」です。
赤字に陥る事業所は、以下の傾向にあります。
- 加配加算の効果を知らず、規定人数で療育を続けている
- 給与が高いからと、有資格者を採用しない
- 「児童指導員等」の「等」の意味を知らず、職員のスキルアップに努めない
とくに「うちは一般職員しかいないから」と諦め、職員のスキルアップに努めない事例が多く見受けられます。
児童指導員等加配加算で123単位を取得できる「児童指導員等」には、児童指導員だけでなく、以下の条件が含まれます。(※一部自治体では解釈が異なり、下記条件では認可されない場合があります。事前に自治体の担当課へお問いあわせください)
- 強度行動障害支援者養成研修で基礎研修を修了した者
- 重度訪問介護従業者養成研修 行動障害支援過程を修了した者
- 行動援護従業者養成研修を修了した者
いずれも座学や実践など10〜20時間ほどの研修で修了できます。
一般職員が受講することで、「児童指導員等」にランクアップし、123単位が取得可能です。
このように知識があれば、より大きな加算を取得できる可能性が広がります。少しでも難しさを感じるようであれば、経験と実績があるフランチャイズへの加盟をおすすめします。
こどもプラスでは、放デイ運営に関する深い知識と豊富な経験で加盟者様を支援します。「知らなくて損する」状態を「知っているから得する」状態に持っていきます。
関連記事:失敗から学ぶ!つぶれる放課後等デイサービスの意外と知られていない特徴
2.放課後等デイサービス報酬改定のリスクと対応方法
放デイでは、より効果的なサービスを提供することを目的に、3年に一度報酬改定が行われます。直近では令和3年に実施されました。
利用者の利便は増しましたが、放デイを運営する事業所には良い効果ばかりとは言い切れません。
これまで加算が取得できたものができなくなり、売上が大きく減少することがあります。具体的な例を取り上げます。
2-1. 令和3年の事例から読み解く報酬改定のリスク
報酬改定による一番のリスクは、「今まで取得できた加算が取得できなくなること」です。
一例として、令和3年の報酬改定前後の変化を見てみましょう。
■令和3年改正前
放デイの教室が、条件により二つに区分されていました。
区分1:指標該当児(障がいの状態を各自治体で判定した結果、ケアニーズが高いと認められた児童)を全児童の50%以上受け入れている事業所。
- 基本報酬(平日)
660単位(サービス提供時間が3時間以上)、649単位(同3時間未満) - 児童指導員等加配加算Ⅰを算定可能
*理学療法士等:209単位
*児童指導員等:155単位
*その他:91単位
区分2:指標該当児の受け入れが、全児童の50%未満の事業所。
- 基本報酬(平日)
612単位(サービス提供時間が3時間以上)、599単位(同3時間未満) - 児童指導員等加配加算Ⅰに上乗せし、児童指導員等加配加算Ⅱも算定可能。単位数はⅠ
- Ⅱ同一。
■令和3年改正〜現在
事業所の区分わけが廃止され、基本報酬・児童指導員等加配加算の単位数も統一されました。
- 基本報酬(平日):604単位
- 児童指導員等加配加算
*理学療法士等:187単位
*児童指導員等:123単位
*その他:90単位
単位数が減少し報酬が減ったように見受けられますが、以下の新たな加算が減少分を補っています。
- 専門的支援加算
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など専門性の高い職員を配置した場合に加算される。187単位。保育士は含まない。 - 個別サポート加算Ⅰ*理学療法士等:187単位
ケアニーズが高い児童(旧来の「指標該当児」)に支援を行った場合に加算される。100単位。 - 個別サポート加算Ⅱ
要保護児童・要支援児童(虐待などで保護や支援が必要な児童)を受け入れた場合に加算される。125単位。
改正前と比べ、「個別」に「専門的な」支援を提供することに重点が置かれています。
しかし理学療法士や作業療法士など専門職員の雇用は簡単ではありません。
報酬改定により取得できる単位数が減少し、減収を回避できなかった事業所は少なくありません。
給付費に頼る事業形態上、放デイの運営が報酬改定に影響されるのは仕方ありません。放デイのオーナーは行政の方向性を早期に読み解き、それにあわせた経営に舵を切ることが重要です。
2-2.報酬改定に対応するには行政の方向性を理解する必要がある
こどもプラスでは、報酬改定に対応するため、これまでの改定の軌跡を辿り、行政が示す方向性を分析しています。
令和3年の報酬改定では、「専門性」や「個別対応」の力をより問われるようになりました。
私たちは多様な個性に対応し、専門的療育を提供するサービスを開発し、運用を開始しています。(詳細は次節参照)
2-2-1.「要望書」を厚生労働大臣に提出
また、こどもプラスでは「現場にいるからこそわかること」「実際に運営しなければわからないこと」を「要望書」として厚生労働大臣に提出した実績があります。
令和3年6月1日付で要望書を作成し、元・厚生労働大臣政務官の大隈和英様、参議院議員の自見英子様に内容をご説明の上、書面をお渡ししました。
コロナ禍での柔軟な対応や人員配置要件の緩和、処遇改善額の見直しなど全9項目の内容を記述し、現場目線での提言を行いました。
2-3.現在の国の指針から必要とされる方向性の成功モデルを早期提供している
こどもプラスの強みの一つは、コンテンツの開発力です。
現在放デイに求められる「専門性」「個別対応」に対応するコンテンツは以下のとおりです。
- 言語聴覚療法に対応した「ことばの教室」
- ビジョントレーニング
- 就労支援
- 自立支援
- プログラミングやドローンなどの専門性を育成するコンテンツ
また放デイの未来を見据え、以下の事業モデルを提案しています。
- 中高生を対象とした就労支援・自立支援
- 空き時間での実費事業の導入
- 多店舗展開時に各教室に対象年齢の区分を設け、年齢ごとの療育に特化
「就労支援」「自立支援」は中高生向けの放デイに、「プログラミング」「ドローン」などは実費事業にも使用できます。
これらを早期導入した新たな事業モデルを構築し、この先の法改正やニーズの変化に備えています。
<こどもプラスのPOINTはこちら!>
☑職員が児童福祉法をはじめ、放デイの運営に必要な法律に精通している。
☑加盟店を回りアドバイスや管理業務を行うSV(巡回専門員)は、自治体職員に比肩する知識を有し、次の法改正を見据えた支援している。
☑フランチャイズ本部では今後の運営に求められるコンテンツの開発に取り組み、逐次導入している。
3.放課後等デイサービス・秘伝の経費管理ノウハウ
放課後等デイサービスで経営難に陥らないためには、しっかりと経費を管理しなければなりません。
とくに人件費は重要です。赤字事業所は人件費率が高い傾向にあります。
この章では放デイで発生する経費を一覧にした上で、「抑えるべき経費」と「かけるべき経費」を解説します。
さらに直営教室での成功例をもとに、人件費率に対する考え方や、採用コストの抑え方も言及します。
3-1.放課後等デイサービスで発生する経費一覧
まずは放デイの運営に必要な経費をしっかりと理解しましょう。
- 人件費(給与・役員報酬・ボーナス積立金・法定福利費)
- 賃料(家賃・駐車場)
- FCに加盟している場合、ロイヤリティー(こどもプラスは10%)
- 車両リース費用
- 車両保険代
- ガソリン代
- 税理士・社労士顧問料
- 保険料
- 消耗品費
- 通信費
- 水道光熱費
- 旅費交通費
- 雑費
このほか、開所時には以下の費用がかかります。
- テナントの敷金・礼金
- 内装費(必要な場合)
- 備品、設備費
さらに、借入金がある場合はその返済額が月々発生します。
3-2.抑えるべき経費・かけるべき経費のコントロール方法を教えます
利益を最大限に上げるには、経費を抑えなければなりません。
しかし、必要な経費まで抑制してしまえば、運営に支障が出ます。抑えるべき経費はしっかりと抑え、かけるべき部分には惜しむべきではありません。
3-2-1.抑えるべき経費
*教室の小口現金
社員が外出するときの交通費や、急に必要となった備品の購入、来客のお茶代などの費用です。教室に置いておく少額のお金と考えればわかりやすいでしょう。
小口現金は必要なときに備えて置いておきますが、「上限いっぱいまで使わないと損」という意識が働き、無駄な買い物に回す事例が見受けられます。
*残業代
人件費は経営を圧迫する大きな要因です。
とくに残業代は「残業をしなければならない業務体系」から見直すべきです。
厚生労働省が推進する「働き方改革」では時間外労働の上限規制が設けられ、労働者の健康確保、家庭との両立などを強く訴えています。(注34)
放デイは「子どものため」という大義名分のもと、長時間労働が黙認される恐れがあります。意識的に残業を減らす努力をしなければなりません。
3-2-2.かけるべき経費
惜しむべきでないのは集客にかかわる経費です。
こどもプラスの場合、チラシやパンフレットの作成費用や、ホームページの作成・運用費用はかかりません。
すべて無料でご提供いたします。ただし、集客イベントの開催や、体験会の実施には費用がかかります。
放デイは利用者が集まらないことには仕事になりません。開所前の体験会開催はもちろん、開所後も利用人数が少ない日にイベントを開催し、教室の魅力を訴求します。
3-3.直営教室の運営で効率的な経費管理モデルを形成
直営教室では上記の「抑えるべき経費」をしっかりと抑え、無駄のない運営を行っています。とくに人件費にはさまざまな工夫を凝らしています。
少し古いデータですが、独立行政法人福祉医療機構が実施した「2018年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について」(注4)に放デイの黒字施設と赤字施設の人件費率の比較が載っています。
それによると、黒字施設は67%なのに対し、赤字施設では93.7%です。人件費が経営を圧迫する様子がよくわかります。
こどもプラスでは人件費率を売上の30%に抑えるよう努力しています。もちろんすぐにではなく、徐々に売上を増やす中で実現します。
まずは黒字事業所の平均である67%を達成し、多店舗展開や実費事業の導入などを行う中で比率を下げていきます。
また、直営教室では人材採用に関しても工夫をしています。地元のハローワークはもちろん、求人検索エンジンをうまく利用しているのです。
求人検索エンジンとはキーワードや勤務地で簡単に仕事を探せる無料の求人サイトです。ネット上のあらゆる採用情報を収集し掲載するため、検索に強いことが特長です。
掲載する文章の書き方や、キーワードの設定方法に関しては、フランチャイズ事業本部に知見がありますのでお任せください。
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さいごに
放デイの運営で赤字に陥らないためには、給付費の仕組みを理解し、利用者の確保と適切な加算の取得を行わなければなりません。
また、給付費の仕組みは3年に一度行われる報酬改定で変化するため、それに対処する準備をしておかないと、急な変化で収益が大きく減少する恐れがあります。
こどもプラスは加盟者様に正しい知識を伝授した上で、これまでの報酬改定の流れから行政の方針を予測します。
開発にも力を入れているため、予測に応じたコンテンツを用意し、早期導入により報酬改定に備えます。私たちの分析力とコンテンツ開発力があれば、報酬改定に負けない教室づくりを目指せます。
給付費の仕組みを正しく理解すれば収益の予想は立てられますが、経費の知見も持つべきです。とくに抑えるべき経費を認識することが大切です。
こどもプラスでは「人件費率」を減らすことに力を入れています。放デイの経営を圧迫する一番の原因が人件費だからです。
まずは放デイの平均である売上の67%を目標に、最終的に30%まで下げられるよう、ノウハウを共有します。
これから放デイへ参入される方は、本記事を参考に、しっかりとしたビジョンと営業戦略を構築してください。
こどもプラスは経験豊富なフランチャイズ事業本部として、そのお力添えをいたします。
放デイへの参入に興味がある方、現在経営難で困っている方、より詳しい情報が聞きたい方は、一度「問い合わせページ」よりお問いあわせください。個別にご説明いたします。
参考文献
注1厚生労働省「障害児通所支援の現状等について」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000801033.pdf 2022年5月31日
注2)厚生労働省 「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/000759622.pdf 2022年6月1日
注3)厚生労働省 「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」 https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf 2022年6月3日
注4)独立行政法人福祉医療機構 「2018年度 児童系障害福祉サービスの経営状況について」 https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/200319_No017.pdf 2022年6月3日