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放課後等デイサービスの「指導員」とは?業務内容や資格要件を紹介

放課後等デイサービスは、障がいを抱える子ども達のニーズが高く、このニーズに応えるべく年々教室の数も増えています。

街中で教室を見かける機会も多くなり、就労に興味がある人も多いのではないでしょうか。

しかし就職や転職することへの一歩を踏み出す壁となるのが、働くための要件です。

「障がいを持つ子ども達への支援事業」という特殊性から、特別な資格や経験がいるとイメージする人もいるでしょう。

実は放課後等デイサービスで働くのに、必ずしも資格が求められるわけではありません。要件は細かく設定されているものの、それを満たせば無資格でも勤務は可能です。

さらに事業所によっては、一切の要件を満たさない人でも採用されるケースがあります。

ポイントになるのが「児童指導員」「指導員」という言葉です。これらの職種は混同されがちですが、なるための要件はまったく異なります。

今回は「児童指導員」と「指導員」の定義を示し、違いを明確にします。

  • あなたは「児童指導員」の要件を満たしているか
  • 放課後等デイサービスで働く場合、どのような働き方になるか

などが端的に理解でき、就職の検討に大いに役立つでしょう。

また、本稿の知識はこれから放課後等デイサービスへの参入を考えている「オーナー志望」の人たちにも役立ちます。

「児童指導員」「指導員」の条件を正しく知ることで、「どのようなときに、どのような人を採用すべきか」考えやすくなります。

資格や経験の不足を理由に、児童福祉への夢を諦めるのはもったいないことです。

本稿を読めば、「どんな人でも放課後等デイサービスに挑戦できる」ことを実感していただけます。

1.放デイで働くなら知っておきたい仕事の内容と人員配置

放課後等デイサービス(以下、放デイ)は児童福祉法に則り運営されています。

放デイで働くうえで知っておきたいのは、児童福祉法で定められている人員配置の基準です。

人員配置では、適切な支援を提供できるように、有資格者や職員の配置が細かく規定されています。

児童発達支援管理責任者と呼ばれる専門職員が、利用者ごとに個別支援計画を作成します。

個別支援計画に基づき提供するサービスが決定されますが、このサービスを実施するのは従業員の仕事です。

基本的な仕事内容を見ていきましょう。

1-1.放課後等デイサービスの仕事内容

放デイで働く従業員は、発達障がいのある小学生〜高校生の子ども達を預かり、心身の発達に必要な支援を行うことを、おもな仕事としています。

日々の業務の中心は子ども達への「療育」です。療育とは子ども達の心身の発達を促すための、医療的・教育的取り組みです。

創作活動や体を動かす遊びなど、事業所ごとに特色あるプログラムが用意されています。

放デイは少人数で運営されることが多く、職員の多くは療育に付随する仕事(準備や送迎、支援記録の記入など)や、運営補助(ホームページ更新やお便りの作成)も行います。

関連記事:発達障がい児に関わる仕事│必要な資格や勤務先・施設の事業を紹介

1-2.放課後等デイサービスの人員配置基準

放課後等デイサービスの人員配置基準

放デイの運営には、ほかの社会福祉事業と同様に自治体からの許認可が必要です。人員配置も児童福祉法で規定されています。

1-2-1.児童福祉法で定められた人員配置

<教室に必ず配置する人員>

1.管理者

2.児童発達支援管理責任者(以下、児発管)

専任かつ常勤で1人以上

3.児童指導員または保育士

定員10人の教室では2人以上(そのうち少なくとも1人は常勤)

※定員11~15人では3人以上必要。定員が5人増えるごとに必要人員が一人増えます。

詳しくは放課後等デイサービス立ち上げ前に知りたい必要な資格と人員配置基準をご覧ください。

1-2-2.加配人員

基準を超えて職員を配置することを「加配」と言います。加配人員は、児発管や児童指導員、保育士である必要はありません。

ただし、加配によって得られる加算には資格による違いがあり、資格保有者ほど大きな加算を得られます。

詳しくは儲かる放デイにするための人員配置・加算のポイントをご覧ください。

1-2-3.管理者と指導員の兼務

管理者は自身の業務に支障がない限り、児発管や児童指導員、保育士などを兼務できます。

ただし、そのさいは各役職の要件を満たす必要があります。

2.放課後等デイサービスの指導員とは

放デイには2種類の指導員がいます。「児童指導員」と「指導員」です。ここではその違いを説明します。

「児童指導員」になるには、一定の条件が必須です。一方で「指導員」は無資格でもなれる職種です。

未経験・資格なしから指導員として放デイで働く方法も説明します。

2-1.児童指導員と指導員の違い

児童指導員と指導員の違いは次の表をご覧ください。

児童指導員 指導員
要件 ①大学や大学院で、社会福祉学・心理学・教育学・社会学のいずれかを専修する学科や研究科を修了している人

②社会福祉士・精神保健福祉士・教員免許のいずれかの資格を保有している人

③児童福祉施設で2年以上(最終学歴が中学卒業の場合は3年以上)の実務経験がある人

児童指導員の要件に該当しないすべての人
放デイでの配置 ・子ども達に療育を提供する基本人員として配置

・加配人員としても配置可能

・基本人員としての配置はできない(配置をしても人数にカウントされない)

・加配人員では配置可能

2-1-1.「児童指導員」は任用によって求められる資格

児童指導員は「任用資格」です。

任用資格とは、その業務に従事している間だけ名乗れるもので、公的な資格ではありません。

要件を満たせば、児童福祉事業に従事している間「児童指導員」を公称できます。

児童指導員の要件は表の①〜③です。3-2「児童指導員の要件の詳細」でさらに詳しく説明します。

2-1-2.「指導員」は無資格でも勤務できる

指導員は「児童指導員」に該当しない、すべての人が対象です。資格や経験は問われません。

しかし就職にさいしては「児童指導員」のようには簡単に募集が見つかりません。理由は2つあります。

  • 児童福祉法で規定された必要最低限の人員(管理者1人+児発管1人+保育士または児童指導員2人)で運営されている教室が多いため
  • 加配をする教室でも、資格保有者を欲しがる傾向が強いため

放デイは運営規程に記した一日の利用者数を守らなければなりません。

そのため収益には限界があり(定員10人の教室で上限300万円/月程度)、多くの教室は必要最低限の人員で運営されています。

ただし毎日定員近い人数を満たせる教室なら、職員を加配するメリットがあります。

加配によって得られる報酬と人件費を天秤にかけたとき、加配のほうが勝るからです。

しかしその場合も加算の点数が高い保育士や児童指導員が優遇されます。

2-2.児童指導員・指導員の仕事内容

児童指導員、指導員とも仕事の内容に大きな差はありません。

児発管が作成した個別支援計画に従い、子ども達に必要な支援を提供します。

教室で子ども達と直接触れあうことが仕事の中心です。それゆえ、体力や忍耐力、児童福祉に従事する責任感が必要です。

また、多くの事業所では療育に付随する仕事や、運営業務の補助も担います。

<児童指導員・指導員の業務例>

  • 療育の提供
  • 療育のための教材・器材等の準備
  • 支援記録の記入
  • 送迎
  • 予約管理
  • ホームページ更新
  • 保護者向けお便り作成
  • 営業補助 など 

とくに指導員は加配人員での配置がメインとなるため、運営業務や管理者の補佐を任されることも多いでしょう。 

2-3.指導員が放課後等デイサービスで働く方法

指導員の募集はまったくないかと言うと、そうではありません。加配の人材を集める場合、保育士や児童指導員は人件費が高くつきます。

さらに場所によっては資格保有者が集まりにくく、欲しいときにすぐに人材を補充できない状態にもなりかねません。

そのような事情もあり、未経験者を含め人材を広く募集する事業所もあります。

「無資格(未経験)OK」の求人を探し当てられれば、指導員も放デイで働けます。

2-4.指導員をスキルアップさせる方法(オーナー向け)

指導員をスキルアップさせる方法(オーナー向け)

放デイオーナーの人、またはオーナーを目指す人に知ってほしいのは、時間とやる気さえあれば「指導員」も「児童指導員」に育て上げられることです。

また、「指導員」を「児童指導員等」にランクアップさせ加配加算を取得する方法もあります。

2-4-1.児童指導員の任用は2~3年経過するとできる

児童指導員の任用条件の一つに「児童福祉施設で2年以上(最終学歴が中学卒業の場合は3年以上)の実務経験」があります。

基準となる1年間の従事日数は180日です。つまり2年なら360日、3年なら540日の勤務により、指導員を児童指導員に任用できます。

将来の任用を見越した「指導員」の採用には、慎重な人もいるかもしれません。たしかに即戦力にはならないため、「力のある人材」を欲している事業所には不向きです。

指導員の採用にはメリットもあります。

<指導員を採用するメリット>

  • 児童指導員よりも人件費を下げられる
  • どんな人でも応募できるため、児童指導員よりも応募者が集まりやすい
  • 自社で育て上げることにより、組織風土にあった人材にできる
  • 新人教育のノウハウを構築できる

とくに人材不足で悩んでいる事業所にとっては、指導員が救世主になるかもしれません。

児童指導員の求人を出しても応募者がない状態が続いているなら、指導員に切り替えるのも有効な手です。

2-4-2.講習の受講で「児童指導員等」の加配基準を満たせる

指導員を雇った場合、ネックになるのが加配加算で得られる点数の低さです。

<児童指導員等加配加算>

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・保育士など:187単位/日

児童指導員等:123単位/日

指導員:90単位/日

 ここで注目したいのは、児童指導員「等」の表記です。実は指導員でも、特定の研修を受ければ児童指導員と同じ123単位が取得できます。

その研修とは、以下のいずれかです。

  • 強度行動障害支援者養成研修で基礎研修を修了した者
  • 重度訪問介護従業者養成研修 行動障害支援課程を修了した者
  • 行動援護従業者養成研修を修了した者

(参照:児童指導員等加配加算・専門的支援加算について | 福岡市

いずれも座学や実践など10〜20時間ほどの研修で修了できます。

指導員に研修を受けてもらえば、加配加算での弱点をなくせます。また、手話通訳士・手話通訳者も児童指導員等の対象者です。

(※一部自治体では解釈が異なり、上記条件では認可されない場合があります。事前に自治体の担当課へお問いあわせください)

3.児童指導員になるには

本章では児童指導員の任用条件をより詳しく見ていきます。

3-1.児童指導員に向いている人

以下の条件に当てはまれば、児童指導員に「向いている」と言えるでしょう。

  • 子ども達の多様性を受容し、価値観の決めつけを行わない
  • 気力や体力が充実している
  • コミュニケーション能力が高い
  • 福祉人としての責任感がある

詳しくは【経営者・職員】放課後等デイサービスに向いている人の特徴を説明をご覧ください。

3-2.児童指導員の要件の詳細

児童指導員の要件の詳細

児童指導員の任用条件は複雑です。自身が該当するか、各節でご確認ください。

なお、本項の説明は厚生労働省が公表する「児童指導員及び指導員の資格要件等」を参照し、弊社でまとめたものです。

(参照:児童指導員及び指導員の資格要件等 | 厚生労働省

3-2-1.大学や大学院などで特定の過程を修了した人

大学や大学院で特定の過程を修了した人は、実務経験なしで児童指導員として働けます。詳細は次のとおりです。

①大学の学部で、社会福祉学、心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科を卒業した人。またはこれに相当する課程を修めて卒業した人

<必要書類>卒業証明書の写しなど(学科の履修が確認できること)

②大学の学部で、社会福祉学、心理学、教育学または社会学に関する科目の単位を優秀な成績で修得し、大学院への入学を認められた人

<必要書類>大学院への入学許可通知書の写しなど(学科の履修が確認できること)

③大学院において、社会福祉学、心理学、教育学もしくは社会学を専攻する研究科を卒業した人。またはこれに相当する課程を修めて卒業した人

<必要書類>卒業証明書の写しなど(研究科の履修が確認できること)

④外国の大学において、社会福祉学、心理学、教育学もしくは社会学を専修する学科を卒業した人。またはこれに相当する課程を修めて卒業した人

<必要書類>卒業証明書の写しなど(学科の履修が確認できること)

*これらの条件に加え、児童福祉施設の職員を養成する専門学校などを卒業することでも、児童指導員になれます。

⑤地方厚生局長などが指定する児童福祉施設の職員を養成する学校、養成施設を卒業した人

<必要書類>卒業証明書の写しなど

3-2-2.教員免許保有者

教員免許保有者も、実務経験を問われずに児童指導員として働けます。詳細は次のとおりです。

小学校、中学校、高等学校、または中等教育学校の教諭となる資格を有する人(免許の更新を行っていなくても、免許状の提示で児童指導員に任用可能)

<必要書類>教員免許状の写し

3-2-3.社会福祉士・精神福祉士資格保有者

社会福祉士の資格を有する人、精神保健福祉士の資格を有する人も、実務経験を問わずに児童指導員になれます。

<必要書類>資格証の写し

3-2-4.児童福祉施設・サービスでの勤務経験者

以上の項目に該当しなくても、児童福祉施設や児童福祉サービスでの実務経験があれば、児童指導員として働けます。必要な期間は次のとおりです。

最終学歴が中学卒業の人:3年以上(540日以上)

最終学歴が高校卒業以上の人:2年以上(360日以上)

<必要書類>実務経験証明書、高校卒業以上の人は卒業証明書の写し

お、児童福祉施設、児童福祉サービスには以下が該当します。

<児童福祉施設>

助産施設、乳児院、母子生活支援施設、保育所、幼保連携型認定こども園、児童厚生施設、児童養護施設、障害児入所施設、児童発達支援センター、情緒障がい児短期治療施設、児童自立支援施設及び児童家庭支援センター

 

<児童福祉サービス>

児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、障がい児入所施設、計画相談施設、障がい児相談施設

4.児童指導員・指導員の勤務場所と平均年収

児童指導員・指導員の勤務場所と平均年収

児童指導員・指導員としての勤務を検討するさい、勤務場所や年収も重要な情報です。厚生労働省の発表を参考に、勤務実態を説明します。

4-1.児童指導員・指導員の勤務場所

児童指導員は児童福祉施設や児童福祉サービスで勤務します。

具体的には

  • 乳児院
  • 児童養護施設
  • 児童発達支援センター
  • 放課後等デイサービス
  • 障がい児入所施設

などが対象です。

障がいを持つ子どもへの療育だけでなく、保護者が面倒を見られない子、虐待で保護された子への養育に携わることもあります。

4-1-1.指導員は「無資格(未経験)OK」をキーワードに入れ求人検索を

上記の施設は基本的に「児童指導員」の要件を満たす人材を求めています。

しかし求人の中には「無資格(未経験)OK」を掲げている求人もあります。根気よく探せば、指導員として勤務できる事業所が見つかります。

4-2.児童指導員・指導員の平均的な給与

厚生労働省が公表する「平成29年障害福祉サービス等経営実態調査結果」に職員一人あたりの年間給与額平均が掲載されています。(※令和2年度版には掲載なし)

それによると、障がい福祉サービス全体での「児童指導員または指導員」の平均年収は、常勤で334万円、非常勤で193万円です。(千円以下切り捨て。以下同)

放デイに限ったデータを参照すると、常勤は258万円、非常勤は191万円です。

給与の高さだけで判断するなら、医療型障がい児入所施設(常勤451万円)など、より高い専門性が要される仕事をおすすめします。

(参照:平成29年障害福祉サービス等経営実態調査結果 | 厚生労働省

4-2-1.指導員の給与の傾向

「放課後等デイサービス 無資格」で求人検索を行うと、給与に幅をもたせている求人(月給20万円~25万円 など)が散見されます。

児童指導員(経験者)を上の給与、無資格の指導員を下の給与で募集していると考えるのが妥当でしょう。

月額で5万円程度の差をつけている事業所が多いことから、児童指導員と指導員の年収差は60万円程度と考えられます。

4-3.放課後等デイサービスの休日数

放デイは働く保護者のための「託児」の役割も果たします。

そのため、日曜祝祭日以外は営業している事業所が多く、職員はシフト制で週2日(日曜とほか一日)の休みを取っています。

正社員の年間休日数は、おおむね107日〜120日程度が多い傾向です。

さいごに

放デイは長期にわたり、障がいのある子どもの成長を見守ることができる仕事です。

個性が強い子ども達の相手は苦労が多いものの、そのぶんやりがいもあります。資格や経験を理由に放デイへの挑戦を諦めてしまうのは、もったいないことです。

あなたが児童指導員に必要な資格を保有しておらず、勤務経験もなかったとしても、一般の「指導員」として勤務できます

加配人員で2〜3年の経験を積めば、「児童指導員」を公称できるようになります。そのころには療育にも慣れ、仕事のやりがいも深く感じられるでしょう。

私たちこどもプラスは、放デイに挑戦する人を応援しています。就職を希望する人はもちろん、人材配置に悩む現オーナー、これから放デイに参入する人など、どなたからのお問いあわせも受け付けます。

個別に対応させていただきますので、お悩みのことがありましたらぜひ一度お問いあわせください。

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