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放課後等デイサービスの立ち上げの手順と開業資格・人員配置基準の知識

放課後等デイサービス立ち上げ前に知りたい必要な資格と人員配置基準

放課後等デイサービスは、障がいを持つ子ども達の自立を支援する社会福祉事業です。

収入の多くが国民健康保険団体連合(国保連)からの給付費で賄われるため、経済状況に左右されにくく、経営を安定させやすい特長があります。そのため年々市場が拡大し、参入事業者が増加しています。

しかし参入を希望しながら、資格や経験がないこと理由に諦めている方もいらっしゃるのではないでしょうか。児童福祉業界と言うと、介護の知識に加え、子どもの心と体に関する専門性が必要だと捉えられがちです。

だからこそ、多くの人が「参入に必要な資格があればあらかじめ取得したい」と考えるのでしょう。

実際職員になるのなら、その考えは間違っていません。しかし、オーナーとして放課後等デイサービスを立ち上げる場合は資格も経験も不要です。事業への明確なビジョンと、経営を安定させるノウハウさえあれば、誰でも開設できます。

あなたに必要なのは、資格を取ることではなく、資格や経験を満たす人材を雇用することです。

教室で子ども達にサービスを提供する職員には、資格や経験が必要です。人員配置基準は児童福祉法で定められており、それを順守しなければ開業の許可が得られません。

今回は放課後等デイサービスの立ち上げをテーマに4つのポイントを解説します。

①放課後等デイサービスの立ち上げ手順

②開所に必要な4つの要件

③人員配置基準と開業資格

④人員配置計画でぶつかる困難と解決法

をテーマに説明します。

この順で読み進めることで、難しい人員配置基準が存在する理由や、それを正しく把握する重要性がわかります。

採用計画の策定や自治体への書類記載・提出など、人員配置に関連する準備は挫折しやすい部分です。本稿を参考にすることで、施設の立ち上げ準備をより円滑に進められます。

1.放課後等デイサービスとは

放デイは、障がいを持つ子どもを対象に、療育を提供する社会福祉事業です。

療育とは、自立支援を促すために教育や医療的サービスを提供することです。放課後等デイサービスでは、発達支援を事業目的に療育を実施しています。

利用者の対象年齢は、就学年齢にあたる小学1年生〜高校3年生です。主に学校の放課後の時間帯に教室でサービスを提供します。

放課後に運営する性質上、働く保護者の「託児」の役割も担っており、「学童保育」的な性質もあわせ持ちます。

未就学児に同サービスを提供する「児童発達支援」とともに、障がいを持つ子どもと保護者を社会的に支援しています。

関連記事:なぜ放デイは世の中に必要とされるのか?社会貢献ビジネスとしての魅力

1-1.放課後等デイサービスのビジネスモデルの特殊性

放デイは金銭的負担を気にせず通所できるよう、利用料金が公的に支援されています。

日々の療育にかかる費用の9割は自治体の負担です。利用者の負担割合は1割に過ぎません。

自治体からの給付費で成り立つビジネスのため、自治体からは、子どもの心身の成長を促す高い療育効果と、児童福祉法を順守し療育内容を詳しく記録・開示する正確な運営が求められます。

開業には、開所するための基準を満たした上で、自治体から許認可を得なければならず、そのハードルは決して低いとは言えません。

許認可要件を理解せず準備を進めると、自治体に書類を提出する段階や手続きの過程で頓挫します。

関連記事:放課後等デイサービスで許認可の取得は難しい?物件の選び方や申請方法

2.放課後等デイサービスの立ち上げ要件4つ

放課後等デイサービスの立ち上げには、児童福祉法で定められた4つの要件「法人格・設置基準・運営基準・人員配置基準」を満たさなければなりません。

・法人格

・設置基準

・運営基準

・人員配置基準

一つでも不備があると、自治体から許認可を得られず、開業準備が滞ります。

ここからわかるように、人員配置基準も要件に含まれています。正しい知識を持ち、自治体への申請前に必要な人員を揃えましょう。

3.放課後等デイサービスの開設手順

放デイの開設手順を辿りながら、人員配置の知識をどの準備段階で活かすかを説明します。

3-1.効果的に開業準備を進める方法

放デイの開業準備は以下の順を辿ると効果的です。実際に私たちこどもプラスも、この順番で加盟店様への支援を行っています。

1.申請窓口への挨拶と相談

自治体窓口へ行き開業したい旨を知らせ相談に乗ってもらいます。

2.法人登記または登記変更

法務局で法人登記を行います。すでに会社をお持ちの場合は事業内容を変更登記します。法人格は、株式会社や合同会社、NPO法人があります。

3.物件の選定

放デイの運営基準に適合する物件を選定します。詳細は児童発達支援・放課後等デイサービスの物件探しで失敗しない4つのポイントをご覧ください。

4.集客活動

営業活動を開始し、自社の存在を知ってもらいます。詳細は意外と大変!放課後等デイサービスの開所準備・集客の取り組みを徹底解説をご覧ください。

5.従業員採用活動

必要な人員を募集します。効果的な採用方法は実は人材不足が倒産要因!安定的に人材を確保する裏技紹介をご覧ください。

6.自治体への申請書類の作成

許認可を得るための書類を作成し、自治体の担当窓口へ提出します。受理されると、審査・現地確認のプロセスに進みます。詳細は意外と大変!放課後等デイサービスの開所準備・集客の取り組みを徹底解説をご覧ください。

7.教室設営

備品や療育に必要な道具を導入し、設置します。

8.保険加入

火災保険や送迎車の車両保険、福祉事業者用の損害賠償保険などに加入します。

9.運営管理書類の作成

日々の業務で使用する契約書類や療育記録、防災マニュアルなどを作成します。

10.開設

ここまで準備を念入りに行い、ようやく開設です。

なお、開業資金のことを詳しく知りたい方は「放課後等デイサービス開業の流れと資金を丸ごと解説」をご覧ください。

3-2.人員配置の知識を活かすべき項目

前項の手順のうち、「5.従業員採用活動」と「6.自治体への申請書類の作成」で人員配置の知識が必要です。

人員配置基準を満たすよう、それぞれの職種に必要な資格保有者を必要な人数雇用します。とくに求人を出すさいは誤認しやすいため慎重に行いましょう。

職員採用後は、

・実務経験証明書

・雇用証明書

・勤務体制・形態一覧表

・資格証

などを自治体に提出し許認可を得ます。

4.放課後等デイサービスの開業資格と人員配置基準

2.教室運営に必要な人員と各職種に必要な資格

放デイの教室開業・運営に必要な人員配置基準および資格を説明します。

経営者はこの基準を遵守する義務があります。必要な人員が揃わないと開業できないだけでなく、開業後に人員が欠けるとペナルティが課されます。

放デイを立ち上げる際は、しっかりと人員配置基準を理解し、人材採用を進めることが大切です。

4-1.児童福祉法で定められた人員配置基準

児童福祉法第66条で定められた人員配置基準は、次のとおりです。

<必ず必要な職員>

1.管理者(あなた)

2.児童発達支援管理責任者

専任かつ常勤で1人以上配置します。

3.児童指導員または保育士

定員10人の教室では2人以上です。そのうち少なくとも1人は常勤の条件があります。

定員11〜15人の施設では3人以上、15〜20名では4人以上と、5人区切りで必要人数が1人増えます。

<提供内容によって必要な職員>

・機能訓練担当職員

日常生活を行うのに必要な機能訓練を提供する場合。

・看護職員

医療ケアを行う場合。

4-1-1.配置の留意事項

「機能訓練担当職員」「看護職員」は「児童指導員または保育士」の人数に加えて換算できます。

ただし、換算した人数の半数以上は「児童指導員または保育士」でなければなりません。

例)児童指導員または保育士を2人配置しなければならない場合

  • 児童指導員+機能訓練担当職員・・・OK
  • 機能訓練担当職員+看護職員・・・NG

※「児童指導員または保育士」が半数である1人を満たさないため

定員10人(「児童指導員または保育士」2人配置義務)の教室ならば、必ず一人は「児童指導員または保育士」を配置しなければなりません。

その上で、二人目として「機能訓練担当職員」や「看護職員」を配置すると基準を満たします。

4-1-2.減算のペナルティ

規定人数を満たす配置ができない場合、開所の許認可が下りません。

また職員の退職などで開所後に規定を満たせなくなった場合、すぐに条件を満たす人材を補充しなければ、ペナルティで単位数が減算されます。

単位数が減算されると、給付費がそのぶん減ります。満足な療育を提供できず、保護者からの信頼も失うでしょう。

4-1-3.規定人数を超えた配置で加算を取得

逆に規定人数を超えた配置が行えるのなら、療育の質を高められます。基本単位数にも加算されるため、収益を増やせます。

詳しくは放課後等デイサービスの人員配置基準と加算一覧|適切な取得方法も紹介をご覧ください。

4-2.管理者

管理者は教室の管理全体を行う役職です。通常はオーナー自身が管理者を務めます。

行うべき仕事は、以下の内容が挙げられます。

<業務管理>

・利用者の管理と利用申し込みの調整

・経理作業

・書類の管理と自治体などへの提出

・保護者からの要望や苦情への対応

・備品の購入や必要設備設置など教室環境の整備

・非常時や災害時の対応マニュアルの策定

<労務管理>

・従業員の雇用と育成

・人員配置

<営業活動>

・学校機関や保育所との関係構築

・役所との関係維持

・集客営業

業務に支障がなければ、児童発達支援管理責任者や児童指導員、保育士も兼務できます。

ただし、無理な兼務で管理が行き届かなくなることは避けましょう。

4-2-1.資格不要はオーナーの大きなメリット

管理者は、子ども達に直接療育を提供する仕事は行いません。したがって、資格は不要です。これは管理者最大のメリットです。

ただし、児童発達支援管理責任者や児童指導員、保育士を兼務する場合は資格が必要です。

4-3.児童発達支援管理責任者

児童発達支援管理責任者(以下、児発管)は、各教室に常勤・専任で一人以上必要です。

教室のリーダー的存在で、教室運営を推進するには欠かせません。

主な仕事は次のとおりです。

・個別支援計画の作成

・教室全体のタイムテーブルの作成

・新規活動プログラムの立案

・学校や保育所など関係機関との連携

・保護者からの要望や苦情への対応

・緊急時対応マニュアルの遵守と、ほかの職員への周知

中でも「個別支援計画の作成」は放デイの運営上最も重要な仕事です。

子ども達への療育は、「個別支援計画書」に沿って行われます。これは一人ひとりの子どもの支援計画を記したもので、この書類がなければ療育を行えません。

したがって、急な退職などで不在になった場合には、早々に後任を見つけなければなりません。欠如が生じた翌々月からは減算のペナルティがあります。

詳しくは児童発達支援管理責任者を採用する重要性と離職を防ぐ支援体制をご覧ください。

4-3-1.資格取得に必要な条件

児発管は、次の①〜④を順に満たした人だけがなれる役職です。

<児発管になる条件>

①実務経験の要件を満たす

②要件を満たす2年前になったら基礎研修を受講(計26時間)

③2年間実際に勤務しながら訓練

④実践研修の受講(計14.5時間)

①の実務要件は以下のいずれかです。

<児発管の実務要件>

  • 通算5年以上の相談支援業務の経験
  • 通算8年以上の直接支援業務の経験

(社会福祉主事、児童指導員、保育士、精神障がい者社会復帰施設指導員などの資格保持者は5年以上で可)

なお医師や保健師、助産師、看護師などの資格保有者は、実務要件が緩和されます。

詳しい情報は希少な人材「児童発達管理責任者」の採用を成功させる効果的な募集方法でご案内しています。児発管採用の前にお読みください。

4-4.児童指導員または保育士

子ども達に日々の療育を提供するのが主な仕事です。一人ひとりの個性に応じたサービスで、子ども達に心身の成長を促します。

保育士は資格保有者に限定した募集を行えば集まりますが、児童指導員を募集するには、要件への知識が必要です。

4-4-1.児童指導員は任用資格

児童指導員は、必要な条件を満たした人が仕事に従事している間名乗れる「任用資格」です。公的な資格ではありません。

したがって、人材を募集するさいには、その「必要な条件」を満たす人を探します。

<児童指導員に任用できる条件>

・社会福祉士の資格保有者

・精神保健福祉士の資格保有者

・大学(短大を除く)や大学院で、社会福祉学・心理学・教育学・社会学のいずれかを専修する学科や研究科を修了した者。またはそれに相当する課程を修めて卒業した者

・教員免許を有する者

・児童福祉施設で2年以上の実務経験がある者

上記のいずれかに該当すれば、児童指導員の任用条件を満たします。

関連記事:放課後等デイサービスの「指導員」とは?業務内容や資格要件を紹介

4-5.そのほかの職員(機能訓練担当職員・看護職員など)

提供するサービスの内容に応じて、機能訓練担当職員や看護職員を採用します。

4-5-1.機能訓練担当職員

機能訓練を提供する時間帯のみ配置義務があります。常勤の必要はありません。

機能訓練とは、手足や口の使い方など日常生活に必要な動作や、ことばの発声などに取り組む訓練です。

子どもが抱える困りごとに深く寄り添えるため、満足度が高いサービスを提供できます。

必要な資格は、以下のいずれかです。

・理学療法士

・作業療法士

・言語聴覚士

・心理指導担当職員

4-5-2.看護職員

経管栄養法で食べ物を与える、痰の吸引を行うなどの医療ケアが必要な場合、看護職員を配置しなければなりません。

ただし、医療機関との連携により看護師が訪問してケアできる場合は、雇用の必要はありません。

看護職員を配置する場合は、以下のいずれかの資格を保有する人を探します。

・看護師

・准看護師

・保健師

・助産師

4-5-3.無資格の職員

規定人数を超えた配置を行う場合は、無資格の職員の配置も可能です。教室で2年間の経験を積めば、児童指導員に任用できます。

また、単位数の加配加算に限定した話となりますが、以下のいずれかの研修を受講し修了すれば、児童指導員と同じ加算単位数を取得できます。

・強度行動障害支援者養成研修

・重度訪問介護従業者養成研修 行動障害支援課程

・行動援護従業者養成研修

5.放デイの人員配置計画でぶつかる課題と解決法

3.人員配置計画でぶつかる困難とその解決法

人員配置を円滑に進める障壁になるのが、

・行政による法改正

・有資格者採用の難しさ

の2つです。とくに法改正は工夫や努力でコントロールできるものではなく、柔軟に対応する以外に手段がありません。

本章ではこれらの詳細を説明し、有効な対策を提案します。

5-1.放課後等デイサービスの「要件」は行政により改定される

放デイの人員配置基準が法律によって定められている以上、変更にも従わなければなりません。

せっかく雇った職員が、法改正により要件を満たさなくなる可能性もあります。

最近では2021年に改定が行われました。人員配置上の変更点を挙げると、

<人員配置基準の変化>

変更前:「児童指導員、保育士または障がい福祉サービス経験者」を児童10人につき2人以上配置

変更後:「児童指導員または保育士」を児童10人につき2人以上配置

という事例がありました。

これにより、単に福祉サービスを経験しているだけでは基準を満たせなくなり、「児童福祉施設での2年以上の実務経験(児童指導員の任用要件)」が必要になりました。

放デイの法改正は、3年に一度行われます。次の改定は2024年です。これから開業するあなたも、それに対応しなければなりません。

関連記事:つぶれる放課後等デイサービスの3つの特徴|なぜ開業に失敗するかを解説

5-1-1.最新の情報に対応するにはFC加盟も検討を

最新の情報に対応するには、行政の動きを素早くキャッチし、予測を立て行動することが大切です。

そのためには、

・自治体担当者と良好な関係を保つ

・周辺同業他社と敵対せず協力しあえる関係を構築する

・放デイ市場の動向を細かく観察する

などの手段が有効です。

もしも個人での対策に限界を感じるのなら、フランチャイズ事業への加盟も積極的に検討しましょう。

私たちこどもプラスは、法改正に柔軟に対応できるよう、早くから準備を進めています。

私たちの強みは、

・全国に教室を有することで、日本全国の自治体の動向を把握可能

・フランチャイズ事業本部の卓越した市場分析力

・新たな法改正に対応するコンテンツの開発力

などです。

これまでの改定の歴史から行政が示す方向性を分析し、対応をご提案します。

詳しくは赤字経営にならないために!給付費から読み解く放課後等デイサービスの運営方法をご覧ください。

5-2.有資格者の採用が困難

有資格者は絶対数が少なく、事業所間での取りあいになります。とくに児発管は希少で、募集をかけてすぐに集まることはありません。

しかし児発管がいなければ、放デイを運営できません。

採用を成功させる裏技

希少な人材の採用を成功させるには、いくつかのコツがあります。

  • 必要要件を満たす資格保有者や、経験者を募集する
  • 要件が似た職種で募集する
  • 職業紹介事業に登録する

などです。詳細は『希少な人材「児童発達管理責任者」の採用を成功させる効果的な募集方法』で解説しています。人材募集をかける前にお読みください。

また、Web上での求人広告の有効な出し方は実は人材不足が倒産要因!安定的に人材を確保する裏技紹介が参考になります。こちらも併せてご覧ください。

さいごに

放課後等デイサービス立ち上げ前に知りたい必要な資格と人員配置基準を解説しました。

少しでも困難を感じることがあれば、フランチャイズ事業への加盟も視野に入れることをおすすめします。私たちこどもプラスは、全国190拠点を展開する強みを活かし、豊富な経験と実績でアドバイスが可能です。

少しでも放課後等デイサービスのフランチャイズ事業にご興味のある方は、お気軽に「問い合わせページ」よりご連絡ください。無料で資料請求・説明会の申し込みもして頂けます。

 

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