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保育士の加配とは?加配保育士の仕事内容や必要資格、やりがいを解説

障がいがある子どもに関われる仕事として、保育園の加配保育士に興味がある人もいるでしょう。

この記事では加配保育士になるために必要な資格やスキル、仕事内容、職場で求められる役割、加配を支援する公的制度を説明します。

本記事の情報を参考にすれば、加配保育士の知識が身につきます。資格やスキルの習得に向けた準備を円滑に進められるでしょう。

障がいがある子の初めての先生として、あなたのキャリアをつくる参考にしてください。

1.保育園における保育士の加配とは

保育園における保育士の加配とは

この章では保育園における加配の詳細と、現状を説明します。

1-1.人員配置基準を超える配置が保育の質を高める

保育士の加配とは、定められた定員を超えて人員を配置することです。障がいがある子どもに個別に対応することが目的です。

保育園には保育士配置基準があります。保育士配置基準とは、預かる子どもの人数に対し、必要な保育士数を規定したものです。国や自治体が基準を設けています。基準を満たさないと営業認可がおりず、保育園を運営できません。

国の定める保育士配置基準は以下のとおりです。

0歳児児童3人につき保育士1人
1、2歳児児童6人につき保育士1人
3歳児児童20人につき保育士1人
4、5歳児児童30人につき保育士1人

(参照:幼稚園と保育所の基準の比較【職員配置・施設設備等】 | 厚生労働省

クラスに障がいがある子どもがいる場合、配置基準どおりの人員では対応しきれません。保育士の人数を増やすことで、保育の質を高め、子ども達により丁寧に寄り添えます。

1-2.保育園での加配の現状

保育園での加配は、必要に応じて実施されることが多く、保育経験の長い非正規の職員をあてる傾向があります。

1-2-1.障がい児の受け入れは行っても、加配を行うかは自治体次第

多くの保育園は障がいがある子どもを受け入れています。しかし保育士の加配は、自治体の判断に委ねられます。

内閣府が平成20年に行った「少子化社会対策推進点検・評価検討会議/少子化社会対策推進点検・評価関係府省連絡会議合同会議(第2回)」の配布資料に、東京都と千葉県の認可保育園(※注)における障がい児保育の状況が示されています。

東京23区を例に取ると、障がい児保育の実施率はおおむね90%以上と高く、ほとんどの特別区で障がい児を受け入れている状況がわかります。

いっぽうで保育士の加配は、必ず行われるわけではありません。障がいの程度や保育状況に応じ、実施の判断を行う自治体も多いのです。

(参照:認可園に関する情報③ 障害児保育・土曜保育 | 内閣府

※注)認可保育園とは、厚生労働省が示す運営基準を満たし、都道府県や市町村から許認可を得て運営している保育園です。(許認可を受けていない保育園は認可外保育園と言います)

1-2-1.加配人員は非正規のベテラン

加配される人員は、勤務歴の長いベテラン保育士で、非正規雇用が多い傾向があります。

岡崎女子短期大学の「加配保育者の実体調査」によると、加配人員の保育歴は15年以上の割合が最も高く、ベテラン保育士が中心です。

また約8割が非正規職員で、正職員は2割もいません。必要が出たときにピンポイントで対応するため、正規職員をあてづらいのでしょう。

保育経験豊富なベテランが、担任保育士の補助的役割も果たしながら、障がいのある子ども達をケアしています。

(参照:加配保育者の実体調査 | 岡崎女子短期大学 櫻井貴大

2.加配保育士とは

2.加配保育士とは

保育園で加配人員として勤務する保育士を、加配保育士と言います。この章では加配保育士の概要と、配置条件を説明します。

2-1.加配保育士の概要

加配保育士とは、障がいがある子どもに対応するため、通常の人員配置に加えて配置される保育士です。

加配保育士の仕事の中心は、対象児童の障がいや特性にあわせ、適切な支援を行うことです。また障がいがある子を持つ親の悩みに寄り添い、相談に応じます。

加配保育士には保育経験だけでなく、障がいへの知識と理解が必要です。専門性があり、障がい児支援に強い意欲を持つ人が適任です。

2-2.加配保育士を配置するための条件

加配保育士は、保育園と保護者双方の同意により配置されます。保育園の独断では配置できません。障がいの診断を医師から下されていることが、加配の判断材料になります。

最終的な配置の可否は、自治体の判断に委ねられます。「子ども2人につき加配保育士1人」といった基準を設けている自治体もあれば、状況に応じて加配する自治体もあります。

(参照:認可園に関する情報③ 障害児保育・土曜保育 | 内閣府

3.加配保育士の仕事内容

3.加配保育士の仕事内容

この章では加配保育士の仕事内容を説明します。

加配保育士の仕事の中心は、障がいがある子どもの援助やケアです。支援を適切に実行するには、付随する仕事も行わなければなりません。

結果として、加配保育士は多岐にわたる仕事をこなすことになります。

3-1.個別の保育計画の作成

加配保育士は、障がいがある子どもを個別(あるいは少人数)で受け持ちます。あらかじめ個別の保育計画を作成することで、障がいに応じた支援を効果的に行えるようになります。

保育計画の作成には、医師の診断結果や保護者の意見も必要です。保護者とコミュニケーションをしっかりと取りながら、子どもの性格や心身の発達も考慮した計画をつくりましょう。

3-1-1.非常勤の加配保育士でも保育計画の作成が求められる

加配保育士の多くは非常勤職員です。「非常勤なのに保育計画まで携わるの?」と疑問を持つ人もいるかもしれません。しかし保育計画の作成は、加配保育士に欠かせない業務です。

障がいがある子どもに最も多く接するのは加配保育士です。保育計画を加配保育士自身で作成することで、保育方針が明確になり、動きやすくなります。

また加配保育士はベテランが多く、保育経験や障がいの知識も豊富です。加配保育士の経験や知識をもとに計画を作成したほうが、より効果的なのです。

3-2.障がいがある子どもへの援助やケア

加配保育士は個別の保育計画にもとづき、障がいがある子どもの援助やケアを行います。支援対象児にとって、加配保育士は専属の先生です。いつも先生がそばで見守ることで、子ども達はのびのびと園生活を送れるようになります。

3-2-1.集団生活を送れるよう仲立ちすることも大切

障がいがある子どもが集団生活に溶け込めるよう、ほかの園児との関係を仲立ちすることも大切です。

加配保育士が支援を行うのは、通常の教室です。一緒にできる遊びには積極的に参加させましょう。仲の良い子がいるなら、良好な友人関係を構築できるよう、それとなく手を差し伸べます。個別のカリキュラムに頼るだけでなく、集団生活の援助も重要です。

3-3.保護者支援

加配保育士は保護者支援も行います。障がいがある子どもを支援するには、家庭との連携が欠かせません。保護者と情報を共有することで、より効果的な支援が可能になります。

保護者が子育てや教育に悩みを抱えている場合は、保育のプロの立場で悩みに寄り添います。障がいがある子どもの保護者は、子育ての悩みに加え、障がいへの悩みや不安を抱えがちです。

保護者の悩みも解決すると、家庭での接し方や教育方法に変化が生じます。障がい児を取り巻く環境がより良くなるのです。

3-4.担任保育士との連携

障がいがある子どもがクラスに馴染むには、担任保育士との連携が必須です。

クラスの集団活動に参加するには、対象児童の情報を現場の保育士全員が認識している必要があります。

まずは担任保育士と連携を取り、非常勤や時間差対応の保育士にも情報を共有してもらいます。

3-5.関係機関との連携

障がいがある子どもの情報を関係機関と共有する場合、加配保育士が窓口の役目を果たします。

子育て支援を行う健康福祉センターや、自治体の保育課担当者からは情報共有を求められがちです。対象児童を保育する時間は加配保育士が最も長いため、保育園を代表して対応します。

4.加配保育士に必要な資格と身につけたいスキル

4.加配保育士に必要な資格と身につけたいスキル

加配保育士に必要な資格と、就労前に身につけたいスキルを説明します。これから加配保育士を目指す人は、本章の情報を参考に準備を進めてください。

4-1.無資格で勤務が可能でも資格保有者が採用される

加配人員は無資格でも勤務可能な自治体もあります。しかし実際に採用されるのは、保育士や幼稚園教諭の資格を持ち、経験豊富なベテランです。

岡崎女子短期大学の「加配保育者の実体調査」によると、調査対象となった加配人員は、全員保育士または幼稚園教諭の資格保有者でした。

保育歴は15年以上の割合が最も多く、ベテラン職員が担当しています。さらに8割以上の人が担任保育士を経験済で、担任保育士を退職後に加配保育士に転身する傾向が窺えます。

加配保育士には障がい児保育という高い専門性が必要なことから、豊富な経験とスキルがある人材が採用されやすいのです。

(参照:加配保育者の実体調査 | 岡崎女子短期大学 櫻井貴大

4-2.障がいへの理解が必要

加配保育士が接するのは障がいを持つ児童です。保育の知識だけでなく、障がいの知識習得も必須です。

現在保育士資格を取得するには、「障がい児教育」や「特別支援教育」も勉強する必要があります。そのため、資格取得段階で知識は身につきます。

しかし現場で障がい児を相手にするのは、思っている以上に大変です。それぞれの子どもには個性があり、知識に即した対応だけでは不十分だからです。

(参照:令和2年度 保育士資格取得に関する科目 | いわき短期大学

4-2-1.児童福祉施設での勤務が有効

あらかじめ障がい児保育を体験しておきたい人は、障がい児を支援する児童発達支援(未就学児対象)や放課後等デイサービス(小中高生対象)など、児童福祉施設で勤務を経験するのも良い方法です。

保育士資格があると採用されやすく、即戦力として扱われます。児童福祉施設で勤務を経験すれば、障がい児保育のプロとして、自信を持って加配保育士に挑戦できるでしょう。

関連記事:発達障がい児に関わる仕事│必要な資格や勤務先・施設の事業を紹介

4-2-2.保育士等キャリアップ研修で知識の習得を

障がい児教育の知識を習得していない保育士は、都道府県単位で実施される「保育士等キャリアアップ研修」を受講しましょう。

「乳児保育」「障害児教育」など8つの専門分野から構成されています。研修機関での受講だけでなく、e-ラーニング(インターネット上)でも受講可能です。

研修により専門性が高まり、加配保育士として勤務する自信がつきます。職務分野別リーダーや、主任保育士を目指すのにも役立つでしょう。

(参照:栃木県保育士等キャリアアップ研修 | 栃木県

4-3.保護者と連携を取り寄り添う力

加配保育士にはコミュニケーション能力や、問題に気づく力、解決に導く力も求められます。

保護者と連携し、悩みがあれば寄り添い解決しなければなりません。普段から人の話をよく聞き、相手の立場でものを考える癖をつけると良いでしょう。

5.加配保育士のやりがいと大変なこと

5.加配保育士のやりがいと大変なこと

加配保育士のやりがいと、大変なことを説明します。

加配保育士は障がい児を支援する社会的意義が大きな仕事です。やりがいが大きい反面、加配保育士ならではの悩みも生じます。

5-1.【やりがい】障がい児専属の先生として支援が可能

加配保育士は障がいがある子ども専属の先生です。

大勢の子どもを同時に見るよりも、深く子どもに寄り添えます。喜びも悲しみも子どもと共有でき、成長の喜びをひしひしと感じられるでしょう。

5-2.【やりがい】障がい児の増加で社会的意義が大きい

加配保育士は社会的意義が大きな仕事です。需要が高まる事業に携わり、社会の役に立つ実感を持てます。

保育園には個別の支援が必要な子が多くいます。しかし十分な支援を提供しきれていないのが現状です。

日本保育協会の調査研究によると、保育園全体の9割以上に「気になる子(※注)」がいます。しかし「大変気になる」子どもに対しても、特別支援を行っている施設はわずか23%に過ぎません。加配保育士がいかに希少で、重要な仕事に携わっているかわかります。

(参照:第4章 調査結果のまとめ | 日本保育士協会

※注)発達障がいの子どもだけでなく、心身の発達が遅い子も含みます。

5-3.【大変なこと】一人ひとり援助方法が異なる

加配保育士の支援対象児童は、全員同じ障がいがあるわけではありません。障がいの種類や特性に応じ、一人ひとり援助方法を変える必要があります。画一的な援助ではうまくいきません。

たとえば自閉スペクトラム症(ASD)の子どもと注意欠陥・多動(ADHD)の子どもを同時に担当する場合、ASDの子が過集中で動けずにいる間、ADHDの子がひたすら教室を走り回る状態も考えられます。体力的にも精神的に大きな負担がかかります。

5-4.【大変なこと】集団にどこまであわせるか判断に迷う

支援対象児童の保育は、個別のカリキュラムばかりというわけにもいきません。

しかし、どこまで個別のカリキュラムで行い、どこから集団にあわせるかは判断に迷うところです。

支援対象児童は加配保育士に一任される傾向が強く、その場その場で加配保育士の判断が問われます。個別で進めすぎると子どもの社会性が育たないため、責任は重大です。

担任保育士とあらかじめ話しあい、教室全体の方針を決めておきましょう。

6.加配保育士の給与と求人情報

6.加配保育士の給与と求人情報

加配保育士の就労を考えたとき、気になるのが求人の有無と給与です。ここでは2023年5月時点での求人サイト情報を参考に、詳細をお伝えします。

6-1.加配保育士の求人は少ない

加配保育士の求人は極めて少ないものの、根気よく探せば見つかります。

たとえばIndeedで東京都の加配保育士の求人を調べたところ、本稿執筆時点で178件の求人がありました。(異なる業務内容も混在しているため、実際の求人数はもう少し減ります)

保育士全体では15万件近い求人があるため、加配保育士の希少さがわかるでしょう。

勤務体系はアルバイト・パートがほとんどです。正社員で募集している求人もまったくないわけではありませんが、極めて稀です。

6-2.加配保育士の給与例

加配保育士の給与はおおむね以下のとおりです。

  • アルバイト・パート:時給1,000円〜1,800円
  • 正社員:月給18万円〜22万円

給与が低い傾向にあるのは、無資格OKの保育補助員を募集している事業所が多いためです。保育補助で人員を雇い、必要があれば加配保育に参加してもらう形です。

責任が重い仕事だけに、納得のいかない給与や形態での就労はおすすめしません。あなたの資格と経験をアピールできる事業所を根気よく探しましょう。

7.加配保育士の採用を後押しする加算制度

7.加配保育士の採用を後押しする加算制度

加配保育士を雇用すると、保育園は国から補助金を受けられます。補助金は療育支援加算と障がい児保育加算にわけられ、それぞれ加算の要件が異なります。

7-1.療育支援加算

療育支援加算は障がい児を受け入れている施設で、非常勤の加配人員を配置し、療育支援を行うことで加算される制度です。障がい児は自治体が認める児童に限られます。(身体障がい者手帳は不要)

療育とは障がいがある子どもの心身の発達を促す教育的・医療的支援です。加配保育士が行う個別支援は療育に該当します。

この制度の特徴は、加配人員の資格を問わないことです。無資格の職員を加配した場合でも、加算を取得できます。

7-2.障がい児保育加算

障がい児保育加算は障がい児を受け入れている特定地域型保育事業所(居宅訪問型の事業所を除く)で、障がい児2人につき加配人員1人を配置した場合に加算される制度です。障がい児は自治体が認める児童に限られます。(身体障がい者手帳は不要)

対象となる特定地域型保育事業所とは、保育園(原則20人以上)より少人数で運営され、0歳〜2歳の乳幼児を保育する事業所です。待機児童解消や多様化する保育ニーズへの対応を目的としています。

この制度での加配人員は、保育士、または保育士と同等の知識・経験を有する人のみです。

(参照:特定教育・保育等に要する費用の額の算定に関する基準等の実施上の留意事項について | 内閣府

(参照:地域型保育事業とは | 栃木県

さいごに

加配保育士は障がいがある子どもを支援するため、規定の人員配置を超えて配置される加配人員です。

配置には資格を必要としない自治体もあるものの、実際は保育経験豊富なベテランが配置されます。障がい児保育には、高い専門性と経験が必要だからです。

仕事の内容は障がいを持つ子どもへの個別支援だけでなく、保護者支援や関係機関との連携も含まれます。

社会的意義が強くやりがいがあるいっぽう、多様な障がいへの対応や、個別支援と集団活動との線引きが難しく、大変な面もあります。

求人は極めて少なく給与も高くないものの、今後さらなるニーズが見込まれる仕事です。通常の保育士業務からレベルアップを図りたい人や、障がい児保育に興味がある人は、根気よく求人を探しましょう。

なお、障がい児支援の経験を積む一つの方法として、児童発達支援や放課後等デイサービスでの勤務をステップにするのも良い方法です。

こどもプラスでは、最新の脳科学理論にもとづいた指導で、障がいのある子ども達を支援しています。ご興味のある人は、弊社の保育士向けサイトをご覧ください。

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