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放課後等デイサービスを多機能型事業所にするメリット・デメリット

全国的に放課後等デイサービスの事業所が増加している今、どの事業所でも事業を黒字化させることは簡単ではありません。

さらにコロナ禍による通い控えも追い討ちをかけ、稼働率がなかなか上がらず収益が増えない事業所が多くなっています。

事業所の収益を増やすためには、やはり新規利用者の獲得と稼働率のアップが重要課題です。

解決策の1つに、放課後等デイサービスに児童発達支援を併設して多機能型事業所にする方法があります。

今回は、事業所を児童発達支援と放課後等デイサービスの多機能型事業所にするメリットとデメリットを解説します。

放課後等デイサービスの多機能型事業所とは

2つ以上の事業を一体的に行う多機能型事業所

放課後等デイサービスの多機能型事業所の定義や指定を受けるための条件を解説します。

2つ以上の事業を一体的に行う多機能型事業所

多機能型事業所とは、障害児通所支援(児童発達支援・医療型児童発達支援・放課後等デイサービス・保育所等訪問支援)および障害福祉サービス事業のうち、2つ以上の事業を一体的に行う事業所のことです。

放課後等デイサービス単独で指定を受けている場合でも、途中から多機能型への指定変更は可能です。

多機能型事業所で、各事業のニーズにあった事業運営を行なっていけばトータルの収益も上がります。

ぜひ、事業所の方向性と照らしあわせながら検討していくのがおすすめです。

多機能型事業所で指定を受ける6つの条件

多機能型で指定を受けるためには、以下の6つの条件があります。

1.利用申込みに係る調整、職員に対する技術指導等が一体的であること

2.職員の勤務体制、勤務内容が一元的に管理されていること。必要な場合には、随時異なる場所で行う事業所間で相互支援が行える体制にあること

3.苦情処理や損害賠償等に対して、一体的な対応ができる体制にあること

4.事業の目的や運営方針、営業日や営業時間、利用料等を定める同一の運営規定が定められていること

5.人事、給与、福利厚生等の勤務条件等による職員管理が一元的に行えているとともに、事業所の会計が一元的に管理されていること

6.異なる場所で行う事業所間の距離が概ね30分以内で移動可能な距離であって、児童発達支援管理責任者の業務の遂行上支障がないこと

(参照:「障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」の一部改正について|厚生労働省

これらの条件がクリアできると、多機能型事業所として申請ができます。

放課後等デイサービスを多機能型事業所にする目的

多機能型事務所にすることで、放課後等デイサービスと児童発達支援の併設が可能です。これによりワンストップでサービスが提供できるようになります。

児童発達支援も放課後等デイサービスも、児童福祉法に基づく障害児通所支援によるサービスです。

児童発達支援と放課後等デイサービスの併設でワンストップサービスの提供

どちらも障害のある子ども達に対して療育を提供し支援を行うことが目的ですが、対象が未就学児と就学児というように年齢によって通う施設が分かれます。

しかし、同じ事業所に児童発達支援と放課後等デイサービスの両方の機能があれば、利用者は就学のタイミングで移る必要がなく、同じ教室に通い続けることが可能です。

多機能型事業所は37.6%

令和2年度に発表された厚生労働省の調査では、全国の事業所で放課後等デイサービスの単独型が40.9%と最多です。

次いで放課後等デイサービス以外の障害児通所支援の多機能型事業所が37.6%(うち児童発達支援と一体的に行なっている事業所が86.6%)となっています。。

(参照:放課後等デイサービスの実態把握及び質に関する調査研究報告書|厚生労働省

放課後等デイサービス単独が最も多い形態ですが、児童発達支援と一体化させ事業を展開することで得られるメリットは大きく、どちらも今後需要が伸びていく事業です。

国の予算を見ても障害福祉サービス関係費は年々拡大しており、令和4年度も前年度を上回る金額になっています。

(参照:令和4年度障害保健福祉部予算概算要求の概要|厚生労働省

各事業形態のメリット・デメリットを熟知した上で、単独型、多機能型を選択していくと良いでしょう。

利用者獲得のためのノウハウは児童発達支援・放課後等デイサービスの集客戦略を徹底解説にまとめているので、お役立てください。

未就学児が通う児童発達支援

児童発達支援は、0歳〜6歳までの未就学の障害を持つ子どもが通い、療育支援を受ける場所です。

日常生活での基本的動作の指導、自立支援や機能訓練、集団生活への適応訓練などを行います。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害含む)のある児童と、手帳の有無は問わず、児童相談所、市町村保健センター、医師などにより療育の必要性が認められた児童も対象です。

就学児が通う放課後等デイサービス

放課後等デイサービスは、6歳〜18歳までの就学児(小学生、中学生、高校生)が対象です。

児童発達支援と同じように、手帳がなくても支援が必要と認められれば対象になります。

ただし、引き続きサービスを受ける必要があると判断された場合は、満20歳まで利用可能です。 児童発達支援と同じように、手帳がなくても支援が必要と認められれば対象になります。

放課後等デイサービスは、学校の授業が終わった放課後の時間や夏休みなどの長期休暇中に通い、療育支援を受ける場所です。

自立支援と生活力向上、日常生活の充実などを目的とした活動を行います。

なぜ放デイは世の中に必要とされるのか?社会貢献ビジネスとしての魅力

多機能型事業所のメリットは児発から放デイへの継続性

最大のメリットは児発から放デイへの継続性

放課後等デイサービスを多機能型事業所にするメリットを紹介します。

障害を持つ子ども達への療育は、始めてすぐに効果が出るわけではありません。

一人ひとりに合う方法を見つけて時間をかけて支援していくことで、困り事が改善し、苦手に対する自分なりの対処法を身につけられるようになります。

昨今では発達障害に対する認知度の高まりもあり、幼児期のうちに発達障害と診断されたり、診断はつかないけれど支援が必要と判断されたりする子ども達が多くなっています。

そこで、幼児期の早い段階から療育を始め、さらに小学生、中学生と継続していくことで、長期的な目線で将来に向けた一貫性のある支援を提供することが、障害者支援の業界では非常に重要視されています。

1つの教室に長く通い続けることは、子どもの安心につながるだけでなく、療育の効果を高めることにもなるので、利用者にとっては大きなプラスになります。

事業所側のメリット

放課後等デイサービスを児童発達支援と併設して多機能型にする事業所側のメリットとして、4つが挙げられます。

・未就学期〜就学期の長期利用で経営が安定する

・0歳〜18歳までと対象年齢の幅が広いので集客しやすい

・放デイが多い地域でも児発の需要はまだ高い

・一人の子に長く関われるので療育の効果を感じてもらいやすい

利用者側のメリット

放課後等デイサービスを多機能型事務所にする利用者側のメリットは3つあります。

・就学後も慣れ親しんだ場所に継続して通えるので安心

・大きく成長する時期に一貫した療育を受けることで成長が促される

・兄弟が利用している教室は事前に雰囲気などが分かり通いやすい

人員・設備基準の特例適用が多機能型の魅力

多機能型の魅力を紹介します。

放課後等デイサービスと児童発達支援の2つの事業を行うとなると、「人件費が倍増し、指導訓練室を増やさなければいけないのでは」と心配になるところです。

しかし、多機能型事業所には人員基準と設備基準で特例が適用されます。

特例適用の事例(人員)

人員は、午前中が児童発達支援、午後は放課後等デイサービスというように時間帯を分けて行う場合、同一職員で兼務可能です。

例えば、定員10名利用の場合、管理者兼児童発達支援管理責任者1名、児童指導員2名が必要になるので、月の人件費は65万〜70万円ほどになります。

2つの事業を行う場合、単純に人件費も2倍になると考えるのが通常ですが、同一職員が兼務できるので人件費は変わらずに済みます。

特例適用の事例(設備)

施設内の設備も、各サービスに配慮しつつ兼用可能となっています。放課後等デイサービスと児童発達支援で時間帯を分ければ、指導訓練室も兼用できます。

(参照:指定障害児通所支援事業者等の指導監査についての一部改正について

この特例の適用によって、同じ施設で同じ人員で2つの事業を行えることも多機能型事業所にするメリットの1つです。

関連記事:放課後等デイサービスの「指導員」とは?業務内容や資格要件を紹介

放課後等デイサービスを多機能型事業所にするデメリット・注意点

放課後等デイサービスを多機能型事業所にするデメリット・注意点

メリットが多い多機能型事業所ですが、放課後等デイサービスを多機能型事業所にすることでデメリットが生じることもあります。

  • 人員の確保・配置が必要
  • 労働時間(週40時間/1人)の規定がある
  • 利用定員を超えると減算になる

3つのデメリットをよく理解しておくことで対応できます。

人員の確保・配置が必要

放課後等デイサービスと児童発達支援を同一時間帯に行う場合や時間帯が被る場合、それぞれのサービスごとに人員の確保が必要になります。

対応→送迎も含め、児童発達支援と放課後等デイサービスの活動時間が被らないようにする。

労働時間(週40時間/1人)の規定がある

労働基準法により一人あたり週40時間までの労働時間のしばりがあり、それを超える場合は新たに人員を雇用しなければなりません。特に月曜日から日曜日まで開所する場合には、注意が必要です。

対応→職員の数と営業日数のバランスを考える。

利用定員を超えると減算になる

小規模で手厚いサービスを行う事業所が、国からの報酬単価が高くなるように設定されています。

児童発達支援の定員10名、放課後等デイサービスの定員10名で合計20名の定員になると、定員10名の事業所よりも報酬単価が下がってしまいます。

これに対して、2つのサービスであわせて定員10名にすることで単価が下がらないようにすること可能です。

また、利用人数が定員を超えてしまうと定員超過利用減算の対象にもなってしまうので、注意が必要です。

<対応方法>

定員が1日の定員の150%、もしくは3か月の利用人数の平均が定員に3を足した数を越えないように調整する。

このような点に注意することで、多機能型事業所にするデメリットは減らせます。ただ、従業員にとっては通う子どもの人数が増えることで必ず負担が増えます。

作業が増えて勤務時間が長くなったり、送迎の手間が増えたりすることは避けられないので、業務効率化につながるシステムを導入するなどの対応は必須かもしれません。

システム導入などは国や自治体からの補助金対象になることも多いので、チェックしておくとスムーズです。

前回の記事で、助成金や補助金の解説をしているので、ぜひご覧ください。

関連記事:助成金と補助金で児童発達支援・放課後等デイサービス事業を安定化

こどもプラスの運動療育は発達にあわせて提供できます

多機能型事業所にすると、0歳〜18歳までの子どもが利用することになります。その時に最も大事なことは、一人ひとりに合う療育が提供できるかどうかです。

「こどもプラス」の運動療育プログラムは、年齢や運動能力に関係なく一人ひとりの発達段階にあわせて提供できるので、幅広い年齢層の子ども達にも十分に対応できます。

これが、私たちの療育プログラムの大きな魅力です。

関連記事:注目される運動療育!療育の軸としての柳沢運動プログラム

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