2025年9月12日

放課後等デイサービスの経営が厳しい理由と対策

「放課後等デイサービスを開業したものの、思うように利益が上がらない」「人材確保が困難で経営が不安定」そんな悩みを抱える経営者の方は少なくありません。

放課後等デイサービスは社会的意義が高い事業である一方、競合の増加、人材不足、制度改正などの影響により、経営の難易度が高まっているのが現実です。

本記事では、放課後等デイサービスの経営が厳しくなる理由を詳しく分析し、赤字を回避して安定した運営を実現するための具体的な対策をご紹介します。

経営が厳しい背景

放課後等デイサービスの経営が厳しくなっている背景には、業界特有の構造的な課題が存在します。これらの課題を正しく理解することが、適切な対策を講じる第一歩となります。

経営が厳しい主な理由

競合事業所の急激な増加:平成27年から令和4年で事業所数が約3倍に増加
報酬改定による収益減:2024年度改定で時間区分制が導入され、短時間利用の単価が下がる
総量規制の実施:一部地域で新規開設が制限され、既存事業所も利用者確保が困難
人材確保の困難:有資格者の不足により人件費が高騰
運営コストの上昇:物価上昇に伴う家賃・光熱費・備品費の増加

約2万

全国の事業所数(令和4年)

3倍

平成27年比の増加率

30%

赤字事業所の割合(推定)

70%

人件費が占める割合

赤字になりやすい要因

放課後等デイサービスが赤字に陥る主な要因を詳しく見ていきましょう。

収入面の問題

稼働率の低迷:定員に対する実際の利用者数が少ない

契約児童数の不足
利用頻度の低下
キャンセルの多発
加算の取得不足:専門的支援加算や送迎加算の未活用
長時間支援の提供困難:人員不足により基本報酬の高い長時間支援ができない

支出面の問題

人件費の高騰:有資格者確保のための高待遇競争
固定費の負担:低稼働でも変わらない家賃・光熱費
非効率な運営:管理体制の不備による無駄なコスト
損益分岐点の把握が重要

多くの事業所で損益分岐点が明確でないため、赤字の要因が見えづらくなっています。月次での収支管理と分析が不可欠です。

人材不足が経営に与える影響

放課後等デイサービス業界では深刻な人材不足が続いており、これが経営に大きな影響を与えています。

人材不足の現状

職種 不足状況 主な要因
児童発達支援管理責任者 深刻な不足 実務経験+研修修了の要件が厳しい
児童指導員 不足 任用資格の理解不足、給与水準
保育士 不足 保育園との人材競合
理学療法士等 深刻な不足 医療機関との待遇格差

人材不足による経営への悪影響

人件費の高騰:有資格者確保のために給与水準を上げざるを得ない
サービス提供時間の制限:人員不足により長時間支援ができず収益機会を逸失
職員の負担増加:少人数での運営により職員が疲弊し、離職率が上昇
専門的支援の困難:理学療法士等の不在により加算が取得できない
運営基準違反のリスク:人員基準を満たせず指定取り消しの危険性

利用者減少による影響

競合の増加と総量規制により、既存事業所でも利用者の確保が困難になっているケースが増えています。

利用者減少の要因

新規事業所の開設:同じ地域内での競合増加による利用者の分散
サービスの同質化:差別化が困難で利用者の選択基準が曖昧
口コミやトラブル:SNSでの悪評や事故による信頼失墜
学校や相談支援事業所との連携不足:紹介ルートの確保ができていない

利用者減少による経営への影響

売上減少の深刻な影響

稼働率10%低下で月間売上が20万円程度減少する一方、固定費は変わらないため、利益に直結します。特に開業初期の事業所では死活問題となります。

売上の直接的減少:利用日数減少により給付費収入が減る
固定費負担の増大:売上減少にも関わらず家賃・人件費は固定
職員のモチベーション低下:利用者減少により職員の達成感が減る
投資意欲の減退:将来不安により設備投資や人材育成を控える

経営を安定させる基本ポイント

厳しい経営環境の中でも、適切な対策を講じることで安定した運営を実現することは可能です。以下では、経営安定化のための具体的なポイントをご紹介します。

収益を安定させる工夫

稼働率向上のための取り組み

利用者のニーズ把握:定期的なアンケートやヒアリングの実施

保護者との個別面談
利用頻度や時間の希望調査
サービス内容の満足度確認

柔軟なサービス提供:利用者の都合に合わせた対応

振替利用の柔軟な対応
送迎エリアの適切な設定
学校行事等への配慮

新規利用者の獲得:積極的な営業活動

学校や相談支援事業所への営業
見学会や体験利用の実施
ホームページやSNSでの情報発信

長時間支援の実現

長時間支援による収益アップ

3時間未満と5時間以上では、平日で300単位、休日で400単位の差があります。人員配置を工夫して長時間支援を提供できれば、大幅な収益改善が可能です。

効率的な人員配置:シフト制の工夫で長時間対応を可能に
プログラムの充実:長時間でも飽きさせない内容の提供
食事提供:昼食・おやつ提供による加算取得と利用時間延長

補助金や加算の基本活用法

各種加算を適切に活用することで、基本報酬に加えて安定した収益を確保できます。

主要な加算と取得条件

加算名 単位数 取得条件 月額収益効果
児童発達支援管理責任者専任加算 41単位/日 専任配置 約8万円
専門的支援加算 15単位/日 PT・OT・ST配置 約3万円
送迎加算 54単位/片道 送迎実施 約10万円
食事提供加算 30単位/回 適切な食事提供 約6万円

加算取得のポイント

専門職の確保:理学療法士等の専門職を非常勤でも配置

近隣医療機関との連携
複数事業所での共同雇用
訪問リハビリとの兼務
適切な記録と報告:加算要件を満たす書類整備
継続的な研修:職員のスキルアップによる加算対象拡大

経営悪化を防ぐリスク回避

財務管理の徹底

月次損益の把握:毎月の収支分析と改善点の洗い出し
キャッシュフローの管理:給付費入金までの資金繰り対策
予算と実績の比較:計画に対する進捗管理

人材確保とコスト管理

適正な人員配置:過剰配置を避けつつ基準を満たす
職員の多能工化:複数業務をこなせる人材の育成
離職率の改善:働きやすい環境作りによる人件費安定化

法令遵守と品質管理

指定取り消しは経営破綻に直結

運営基準違反による指定取り消しは、即座に事業停止となります。法令遵守は経営の最優先事項として位置付けましょう。

定期的な内部監査:運営基準の遵守状況をチェック
記録の適切な管理:個別支援計画や日報の整備
事故防止対策:安全管理体制の構築と職員研修

成功事業所に学ぶ基本戦略

競争が激しい環境でも安定した経営を続けている事業所には、共通した特徴や戦略があります。成功事例から学ぶべきポイントを整理します。

成功する事業所の特徴

明確な特色とコンセプト

専門特化型の支援:運動療育、学習支援、芸術療法など特定分野に特化
対象児童の明確化:自閉症、ADHD、知的障害など特定の障害に特化
独自プログラムの開発:他事業所にはない魅力的なプログラム

高い顧客満足度

口コミが最強の営業ツール

成功事業所の多くは、保護者からの紹介で利用者を増やしています。満足度の高いサービス提供が、最も効果的な営業活動となります。

個別対応の徹底:一人ひとりの特性に合わせたきめ細かい支援
保護者との密な連携:定期的な面談や情報共有
成果の見える化:支援効果を具体的に示す仕組み

効率的な運営体制

ITシステムの活用:請求業務や記録管理の効率化
標準化された業務フロー:誰でも同じ品質のサービスを提供
適切な人員配置:繁忙時間に合わせた効率的なシフト

長期的に持続可能な経営の考え方

ビジョンと戦略の明確化

5年後・10年後のビジョン設定:目指すべき事業所像を明確化
段階的な成長戦略:無理のない拡大計画の策定
地域での役割定義:地域福祉における自事業所の位置付け

人材への投資

人材が最大の資産

放課後等デイサービスは人材依存度の高い事業です。短期的なコスト削減より、長期的な人材育成に投資する事業所が持続的な成長を実現しています。

継続的な研修実施:職員のスキルアップ支援
適正な処遇改善:給与・福利厚生の充実による定着率向上
キャリアパスの提示:職員の将来設計をサポート

地域との連携強化

学校との密な連携:支援方針の共有と情報交換
相談支援事業所との協力:適切な利用者紹介の仕組み構築
地域イベントへの参加:地域コミュニティでの認知度向上

リスク分散の考え方

複数事業の検討:児童発達支援や相談支援事業の併設
財務基盤の強化:自己資本比率の向上と借入の適正化
市場変化への対応力:制度改正や競合増加に対する適応力

経営改善をサポート「こどもプラス」へ

放課後等デイサービスの経営改善には、業界特有の知識と経験が必要です。一人で悩まず、専門家のサポートを受けることで効率的な改善が可能になります。

『こどもプラス』では、運動療育に特化した事業所運営のノウハウを活かし、収益改善、人材確保、運営効率化などの課題解決をサポートします。

「稼働率が上がらない」「人材確保に苦労している」「収益改善の方法が分からない」といった悩みをお持ちの経営者様は、ぜひご相談ください。

まとめ

放課後等デイサービスの経営が厳しくなっている要因は複合的ですが、適切な対策を講じることで安定した運営は十分可能です。

重要なポイントをまとめると以下の通りです:

現状分析の徹底:自事業所の収支構造と課題を正確に把握する
稼働率向上への取り組み:利用者満足度の向上と新規獲得の両面から攻める
加算の積極活用:専門職配置や長時間支援による収益向上
人材への投資:短期的なコスト削減より長期的な人材育成を重視
差別化戦略:明確な特色とコンセプトによる競合との差別化
リスク管理:法令遵守と財務管理の徹底

放課後等デイサービスは、障がいのある子どもたちの成長を支援する社会的意義の高い事業です。厳しい経営環境だからこそ、基本に忠実な運営と戦略的な取り組みが重要になります。

一時的な困難に直面しても、利用者本位のサービス提供と健全な経営の両立を目指し、持続可能な事業運営を実現していきましょう。

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