【令和5年新送迎規定中心】放課後等デイサービスの送迎規定全解説
令和5年4月に、児童福祉施設を対象とした送迎規定の改正が行われました。
子ども達の安全を守るため緊急に行われた改正で、定期的に行われる報酬改定とは別のものです。放課後等デイサービスの事業者も、内容を把握し対策する必要があります。
この記事では令和5年に施行された新たな送迎規定の内容を中心に、放課後等デイサービスの送迎規定を詳しく説明します。
新送迎規定への対応をまだ行っていない事業者様にとっては、対応への大きな助けになるでしょう。
また、いま一度従来の送迎体制を振り返ることで、送迎できる場所や人員配置など、間違えやすいポイントを確認できます。自社の送迎体制を見直すきっかけにしていただけます。
1.令和5年に施行された送迎規定の内容
令和5年4月1日より、放課後等デイサービスの送迎規定が改正され、新たな義務が加わりました。本章では改正の内容を詳しく説明します。
この記事は令和4年12月28日付けで厚生労働省が都道府県知事や指定都市・中核市市長に通知した、「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令について(通知)」を参照しています。
書類の引用は行わず、内容をかみくだいて解説します。
(参照:児童福祉施設の設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令について(通知)| 厚生労働省)
1-1.報酬改定とは別に送迎規定が追加された
今回の改正は、3年に一度の報酬改定とは別物です。
令和4年に起きた送迎用バスでの園児置き去り事故をふまえ、子ども達の安全のために緊急に施行されました。
児童福祉法第40条の3および第71条の6に、新たな規定が明記されています。
内容は送迎にあたっての安全管理の徹底です。施設形態ごとに課される義務が異なります。
(参照:児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準 | 厚生労働省)
1-2.対象施設は児童福祉施設や保育所、児発、放デイなど
改正の対象となる施設は次のとおりです。対象はバスを所有する施設に限りません。
<義務付け事項①の対象施設>
児童福祉施設(助産施設、児童遊園および児童家庭支援センターを除く)、指定障がい児入所施設、地域型保育事業所、指定障がい児通所支援事業所、放課後児童健全育成事業所
<義務付け事項②の対象施設>
保育所、地域型保育事業所(居宅訪問型保育事業所を除く)、指定児童発達支援事業書(同センターを含む)、放課後等デイサービス事業所
放課後等デイサービスは、義務付け事項②の対象施設です。
1-3.放課後等デイサービスに義務付けられた事項
放課後等デイサービスに義務付けられた、「義務付け事項②」の内容はつぎのとおりです。
<義務付け事項②>
・通所する子どもを車で送迎する場合、使用する車両によってはブザー、または子どもの見落としを防止する安全装置の設置が必要
・乗降時に子どもの所在確認を行う。設置した安全装置のスイッチをONにし、点呼等で所在確認を徹底する
通常の送迎以外でも、車に子どもを乗せる場合は法令を遵守しなければなりません。屋外での活動で車を出すときにも、所在確認が必要です。
1-4.すぐに確認!安全装置設置の対象となる送迎車
安全装置の設置対象車両は、座席が2列以下の自動車を除く、すべての自動車です。
3列シート車やマイクロバスを所有する事業所は、できるだけ早く安全装置を設置し、対応しなければなりません。
車椅子の設置スペースも座席に含まれます。2列目の後ろに車椅子を設置する場合も対象です。
1-5.車に設置すべき安全装置とは
車に設置する安全装置は、どのようなものでも良いわけではありません。国土交通省が定めた技術要件に適合している必要があります。
こども家庭庁のホームページで、適合が確認された装置の一覧が公表されています。リストに掲載されている商品を購入すれば安心です。
*送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のリストについて | こども家庭庁
1-6.違反すると改善勧告の対象に
安全装置の設置は任意ではなく義務です。
義務付けに違反すると、児童福祉法に抵触し、改善勧告の対象になります。改善されない場合、同法第46条や第61条4番を根拠に、事業停止命令や罰則が下されます。
(参照:児童福祉法 | e-GOV)
1-7.令和6年3月までは経過措置期間
安全装置の設置に関しては、急な対応が難しい事業所のために経過措置期間が設けられています。
できるだけ早い対応が望ましいものの、令和6年3月31日までは代替手段も認められています。(点呼での所在確認には経過措置がありません。安全装置がなくても、点呼は実施しなければなりません)
厚生労働省が提案する代替手段は、次のとおりです。
・運転席に確認を促すチェックシートを備え付ける
・車体後方には、子どもの所在確認を行ったことを記録する書面を備える
運転手や職員が車内確認をすることが習慣になるよう、工夫します。
なお、令和6年4月1日以降は安全装置が設置されていない車両(座席が2列以下の自動車を除く)は法令違反になります。早めに対応を進めましょう。
1-8.送迎規定のポイントまとめ
・座席が3列以上の車が対象(2列や1列の車は除外)
・ブザーその他の安全装置を設置する。スイッチをONにし、乗降時に子どもの所在確認を行う
・安全装置は以下のサイト掲載のリストから選ぶと確実
・安全装置の設置に関しては、令和6年3月末までは経過措置期間。チェックシートや書面設置での代替が可能
・令和6年4月からは、違反すると改善勧告の対象になる
2.放課後等デイサービスの送迎体制
2章以降では、放課後等デイサービスの送迎体制を解説します。
普段送迎を行っている事業所様は、送迎方法に間違いがないかご確認ください。
2-1.加算単位を取得できるため多くの事業所が送迎を実施
送迎は公共交通機関が使えない子どもや、保護者に送迎をお願いできない子どもが対象です。自宅と教室の間だけでなく、放課後は学校に迎えに行くこともあります。
事業所にとっては、車両購入(リース)費用や保険への加入などお金と手間がかかります。しかし、そのぶん送迎加算が算定でき、日々の売上増加につながります。
厚生労働省が平成31年に公表した調査結果によると、放課後等デイサービスの79.3%が送迎加算を算定しています。多くの事業所が送迎を日常的に行っていることがわかります。
2-1-1.放課後等デイサービスの職員は、児発管以外誰でも従事できる
多くの事業所が日常的に送迎を行えるのは、送迎担当者に大型免許や二種免許といった、特別な運転免許が不要(※注)だからです。普通自動車免許さえあれば、送迎に従事できます。
多くの放課後等デイサービスでは、教室の職員が送迎にあたります。一般職員のほか、管理者が行っても問題ありません。
ただし児童発達支援管理責任者(児発管)は送迎に従事できないため、注意が必要です。
※注)送迎にマイクロバスを使用する場合は、中型以上の自動車免許が必要です。
2-2.放課後等デイサービスの送迎加算とは
送迎加算は、利用者の送迎を実施したときに報酬点数を加算できるシステムです。
放課後等デイサービスでは送迎の在り方が議論され、加算廃止が検討された時期もありました。障がいがある子どもの自立能力を妨げる可能性があると考えられたからです。
しかし、80%近い事業所で送迎を行っている状況を鑑み、令和5年現在も加算が継続されています。
2-2-1.放課後等デイサービスが得られる加算の一つ
加算とは、事業所の「日々の業務+α」の働きを評価する仕組みです。
送迎加算は、日々の業務に加え、送迎で利用者の利便性を高めることへの評価です。
放課後等デイサービスにはさまざまな加算があります。送迎加算は最も効果的に取得できる加算の一つです。
放課後等デイサービスの報酬は、「基本報酬+加算」です。加算をいかに取得するかが、日々の売上をあげる鉄則です。
3.放課後等デイサービスにおける送迎加算の算定要件
放課後等デイサービスで送迎を行うには、要件を満たす必要があります。送迎で取得できる加算単位数も確認しましょう。
3-1.利用者の自立を妨げないことが送迎実施の要件
送迎の実施には要件があります。利用者の自立を妨げないよう、配慮することです。
子どもが公共交通機関を利用できる場合、成長段階によっては送迎が自立の妨げになる可能性があります。
送迎を行うのは、子どもが自分で通所できず、保護者が就労等の理由で送迎できない場合のみです。
(参照:令和3年度障害福祉サービス等報酬改定の概要 | 厚生労働省)
3-1-1.学校への送迎
学校への送迎を行うには、保護者が就労等で送迎できないことに加え、以下の要件が必須です。
<学校への送迎要件>
・スクールバスのルート上に事業所がなく、スクールバスでの送迎が実施できないこと
・放課後等デイサービスを利用しない学生の乗車時間を大きく引き伸ばしてしまい、スクールバスでの通所が適切でないこと
・就学奨励費(特別支援学校に通う生徒および保護者への補助費用)で、送迎手段を確保できないこと
・その他市町村が必要性を認める場合
いかなる場合でも学校に送迎できるわけではありません。スクールバスや公共交通手段を利用できる場合は優先します。
(参照:平成24年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A | 厚生労働省)
3-1-2.徒歩では原則加算不可
徒歩で送迎を行う場合、経費が発生しないため、送迎加算は算定できません。送迎は車で行います。
ただし、市町村によっては例外的に徒歩での送迎でも、加算が認められるケースがあります。事前に自治体にお問いあわせください。
3-2.送迎加算で取得できる単位数
送迎加算で取得できる単位数は次のとおりです。
①障がい児に対して行う場合(重症心身障がい児を除く):1人1回につき54単位
②重症心身障がい児に対して行う場合:1人1回につき37単位
<備考>
①の事業所のうち、痰の吸引が必要な子どもに対し、看護職員を伴い家と事業所間の送迎を行った場合、片道につき37単位が所定単位数に加算されます。
(参照:放課後等デイサービスに係る報酬・基準について | 厚生労働省)
①の事業所において往復で送迎を行った場合、1人につき108単位が加算されます。単位単価を10円とすると、1人1日1,080円が売上に追加される計算です。
3-3.放課後等デイサービスの同一敷地内での送迎加算
同一敷地内に複数の教室(建物)を有する事業所の場合、サービス提供時間中に教室間移動をすることもあるでしょう。
敷地内での子どもの移動に車を使った場合も、送迎加算を算定できます。
ただし、加算単位数は通常の7割です。
①障がい児に対して行う場合(重症心身障がい児を除く):1人1回につき37.8単位(※注)
②重症心身障がい児に対して行う場合:1人1回につき25.9単位
①の事業所で10人を車で移動した場合、378単位が加算されます。
※注)小数点以下は自治体により、切り捨てや四捨五入など判断が異なります。事前にご確認ください。
(参照:放課後等デイサービスに係る報酬・基準について | 厚生労働省)
4.放課後等デイサービスの送迎で注意すべきこと
放課後等デイサービスで送迎を行い、送迎加算を算定する場合、いくつかの注意事項があります。
勘違いしたまま送迎を続けていると、実地指導で自治体から違反を指摘される可能性があります。
違反が改善されない場合、ペナルティとして基本報酬が減算されます。
4-1.放課後等デイサービス事業所には送迎記録の記入義務がある
放課後等デイサービスでの送迎は、突発的には行なえません。以下を徹底する必要があります。
・個別支援計画書にあらかじめ送迎の必要性を明記する
・利用者名、担当者名、送迎場所、時間を記した送迎記録簿を作成し、毎回記録する
・利用者ごとの「放課後等デイサービス提供実績記録票」に送迎の実施状況を記載する
4-1-1.個別支援計画書への記載
個別支援計画書は、利用者にサービスを提供するにあたり、児童発達支援管理責任者を中心に作成する書類です。
障がい特性や個性にあわせ、効果的な支援を提供できるよう工夫します。送迎が必要な場合は、あらかじめ送迎を含めた支援計画を作成します。
4-1-2.送迎記録簿
送迎記録簿は、児童を送迎し、乗降チェックを行った根拠を示す書類です。
実地指導や監査で提出を要求されることがあります。送迎が円滑に行えているか、事業所でチェックするときにも役立ちます。
4-1-3.サービス提供実績記録票
サービス提供実績記録票は、自治体への提出が義務付けられている書類です。
利用者ごとに書類を作成し、毎日の利用状況を記入します。送迎を行った場合は、送迎加算の欄に回数を記入します。
保護者には確認欄にチェック(レ点・○印)や署名、押印をもらうことも忘れないようにしましょう。
(参照:サービス提供実績記入例 | 大阪府)
4-2.サービスの提供時間が30分未満では算定できない
放課後等デイサービスのサービス提供時間(送迎時間は含めない)が30分に満たない場合は、基本報酬を受け取れません。基本報酬が取得不能な状況では、送迎加算も算定できません。
子どもが教室まで来たものの、体調不良で30分以内で帰ってしまった場合は、欠席時対応加算Ⅱ(一回あたり94単位)を算定できます。
ただし、事業所の送迎で通所した場合でも、送迎加算は利用できません。
4-3.放課後等デイサービスが送迎を行える場所の規定
放課後等デイサービスが送迎を行える場所には規定があります。
子どもの安全上の理由から、「今日は途中のスーパーまで」「明日は駅まで」などの運用は許されません。
送迎ができるのは、
・教室と家の往復
・通学している学校への迎え
のみです。
最寄り駅や集合場所に送迎を行う場合、あらかじめ利用者・保護者と同意の上、特定の場所を定め、個別支援計画書に明記する必要があります。
利用者や事業所の都合で特定の場所以外への送迎を行う場合は、加算の算定対象外です。
(参照:平成27年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A | 埼玉県)
4-3.サービス提供時に送迎に出ている人員は、配置から除外される
放課後等デイサービスでは、児童発達支援管理責任者以外、どの職員も送迎を行えます(要普通免許)。
しかし児童へのサービス提供時間内に外に出る場合、送迎に出ている職員は教室の配置人員とみなされません。
児童指導員が2人必要なサービス提供時間内に、1人が送迎で外に出てしまうと、教室は配置基準を満たせません。
配置基準を満たせないと、ペナルティで基本報酬が減算されます。サービスの質も低下し、保護者からの信頼も失いかねません。
関連記事:放課後等デイサービスの立ち上げの手順と開業資格・人員配置基準の知識
5.送迎を続ける上で放デイ職員が意識すべきこと
令和5年4月に加わった規定により、襟元を正した事業所も多いでしょう。ここでは送迎を続けるにあたり、放課後等デイサービスの事業所が意識すべきことを説明します。
5-1.送迎には事業所の責任が問われる意識を持つ
令和5年の改正で強く意識させられたのは、送迎を行う事業所の責任の重さです。
放課後等デイサービスで送迎を担当するのは、多くが教室の職員です。プロのドライバーが従事することは少ないでしょう。
しかし、たとえプロでなくとも、送迎で利用者の命を預かることに変わりはありません。
安全運転は当然のことながら、利用者の置き去りのようなヒューマンエラーが起こりうることも、念頭に置かなければなりません。
一人ひとりが子どもを預かる責任を持ち、二重三重に事故を防ぐ手立てを講じながら業務にあたる必要があります。
5-2. 送迎規定を遵守し安全確認方法の共有を
事故を防ぐには、送迎規定を細部まで理解した上で、法を守る意識を強く持つことが必要です。
管理者だけでなく、送迎にあたるすべての職員に送迎規定を周知徹底します。安全機器の使用や点呼をルール化し、全員で共有できる状態にすると良いでしょう。
加算全般のポイントは以下の記事をご覧ください。
放課後等デイサービスの人員配置基準と加算一覧|適切な取得方法も紹介
さいごに
放課後等デイサービスで行う送迎には、遵守すべきルールがあります。ポイントは以下のとおりです。
<送迎の条件>
・保護者が就労等の理由で送迎ができない
・利用者の自立を妨げない(公共交通機関で通所できる場合は、送迎を行わない)
<送迎にあたる人員>
一般的には、児童発達支援管理責任者を除く教室職員(管理者を含む)
<送迎を行える場所>
・利用者の自宅
・利用者が通う学校(必要性がある場合のみ)
・利用者・保護者とあらかじめ取り決めた場所
<車両の規則>
・座席が3列以上の車はブザーその他の安全装置の設置が必要(2列や1列の車は除外)
・安全装置はスイッチをONにし、乗降時に子どもの所在確認を行う
<注意点>
・個別支援計画書や送迎記録簿への記入を忘れずに行う
・サービス提供時間内に送迎を行う場合、教室に残った職員で人員配置基準を満たす
ルールを遵守し送迎を行うことで、送迎加算を算定できます。加算単位数は次のとおりです。
<送迎加算単位数>
・障がい児に対して行う場合(重症心身障がい児を除く):1人1回につき54単位
・重症心身障がい児に対して行う場合:1人1回につき37単位
※同一敷地内を移動するときに車を利用した場合は、通常単位の7割の単位数を算定可能
送迎を行った子どもが30分未満で帰った場合、送迎加算は算定できません。欠席時対応加算Ⅱを算定した場合も、送迎加算を利用できないため注意が必要です。
今後も子ども達に安心して送迎を利用してもらうため、送迎規定の細部までしっかりと理解し、安全への意識を徹底し業務にあたりましょう。
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