【2023年版】放デイ・児発の特別支援加算とは?概要と算定要件を解説
特別支援加算とは、放課後等デイサービス・児童発達支援で、利用児童の障がい特性に対応する専門職員を配置し、機能訓練や心理指導を行うことを評価する加算です。
特別支援加算は算定要件が厳しく、取得をするのは簡単ではありません。
専門的支援加算との区別がつきにくく、どのような場面で使うべきか判断に迷うオーナー様も多いのではないでしょうか。
今回は、放課後等デイサービスの「特別支援加算」の内容や取得の仕方を詳しくお伝えします。本稿を読むことで、特別支援加算の利用方法が簡単にわかります。
1.特別支援加算の算定要件
特別支援加算はどの事業所でも取得できるわけではありません。取得には3つの算定要件があります。本章ではそれらを順に説明します。
あなたの事業所が特別支援加算を取得できるか検討してみましょう。
1-1.特別な支援へのニーズがあること
特別支援加算を取得する1つめ算定要件は、「特別な支援」へのニーズがあることです。
特別な支援とは、理学療法士や作業療法士などが策定する専門的支援を指します。
通所する児童のニーズを、通常の療育(創作活動や運動など)で満たせている場合、特別支援加算は取得できません。
1-2.特別な支援に対応できる専門職員の配置
2つめの算定要件は専門職員の配置です。以下のいずれかの資格・技能の保有者が必要です。
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 心理指導担当職員(大学で心理学を専修した人など ※注1)
- 看護職員
- 国立障害者リハビリテーションセンター学院の視覚障害学科を履修した者など ※注2
※注1)心理学の単位を取得しただけでは要件を満たせません。心理学を専修する学科か課程を修めて卒業している必要があります。
※注2)これに準ずる視覚障害者の生活訓練を専門とする技術者養成研修修了者も含みます。
1-3.特別な支援を実施する部屋と設備の用意
3つめは特別な支援を提供する部屋や設備の確保です。
特別な支援には心理指導が含まれます。心理指導はほかの子どもの目につかない場所で、個別に行わなければなりません。
そのため、事業所には支援を提供する部屋が必要です。
また理学療法や作業療法、言語聴覚療法を行う場合にも設備の用意が必須です。
2.特別支援加算の内容
本章では特別支援加算の内容を詳しく説明します。取得に向けて行うべきことや、具体的な支援内容が理解できます。
2-1.厚生労働省が告示する要件
福島県児童家庭課が令和4年6月に公表した「障がい児通所支援事業所等における運営上の留意点」に、厚生労働省が示す特別支援加算の要件がわかりやすくまとめられています。
同資料を参考に内容を整理すると、特別支援加算の算定要件は以下のとおりです。
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、心理指導担当職員等を配置する
- 計画的に機能訓練または心理指導を行う
- 個別支援計画とは別に特別支援計画の作成が必要
- 特別支援計画の作成や見直しは、個別支援計画に準じて行う
- 支援記録とは別に、対象児童ごとに訓練記録を作成する
(参照:障がい児通所支援事業所等における運営上の留意点 | 福島県児童家庭課)
2-2.特別支援計画の作成
前節の条件のとおり、児童発達支援管理責任者が作成する「個別支援計画」とは別に、専門職員があらかじめ「特別支援計画」を作成し、保護者の同意を得なければなりません。
なお、特別支援計画が作成されていれば、サービスの提供者は該当の専門職員である必要はありません。児童指導員や保育士など、ほかの職員が提供しても加算対象になります。
ただし、専門性が低い職員がサービスを行うと、支援の質が落ちる可能性があります。その点には留意しなければなりません。
2-3.専門職員が策定する機能訓練とは
専門職員はそれぞれが保有する専門性を活かし、該当する子どもの特別支援計画を作成します。
各専門職員が策定する機能訓練の範囲は次のとおりです。
- 理学療法士:立ち上がり、寝返り、歩行などの身体機能や動作の向上訓練
- 作業療法士:食事、軽作業など、日常動作や作業をとおした心身の機能向上訓
- 言語聴覚士:言語トレーニングなどことばの訓練
- 心理指導担当職員:虐待を受けた児童への心的外傷ケア
3.特別支援加算の手続きと単位数
本章では特別支援加算を取得する場合に必要な申請手続きと、取得できる単位数を説明します。
手続きを忘れていると、支援をしても加算を取得できないので注意が必要です。
3-1.特別支援加算届出書の提出
特別支援加算を導入する場合は、事前に指定権者(自治体など)に「特別支援加算届出書」を提出しなければなりません。
3-1-1.特別支援加算届出書の様式
届出書には機能訓練担当職員の職種と、特別な支援を受ける児童の氏名や年齢などを記入し、特別支援計画書を添えて提出します。
長野県が書式を提供していますので、参考にしてください。
(参考:障がい児施設の指定申請等様式 | 長野県)
3-2.加算単位数
特別支援加算で取得できる単位数は、該当児童1人、1日あたり54単位です。
特別な支援を要する児童が1人、週に3日の利用で一ヶ月の加算金額を概算すると
- 54単位×10円(報酬単価)×3日×4週間=6,480円
金額は大きなものではないものの、着実に売上を増やせます。
4.特別支援加算の注意事項
特別支援加算を利用するときには
- 専門的支援加算
- 児童指導員等加配加算
との併用で注意点があります。
これらの内容を知らずに申請すると、加算を取得できないことがあります。詳細の理解と事前の確認が必要です。
4-1.専門的支援加算との併用
「理学療法士や作業療法士の支援」というと、「専門的支援加算」を思い浮かべる人も多いでしょう。
実際、専門的支援加算も「支援の専門性への評価」という点で特別支援加算と共通しています。そのため、併用には注意が必要です。
放課後等デイサービス(以下、放デイ)と児童発達支援(以下、児発)それぞれの注意事項を確認しましょう。
4-1-1.放課後等デイサービスでは併用不可
放デイでは「専門的支援加算」の該当配置専門職は、特別支援加算と同じです。そのため加算はどちらか片方に限定されます。
専門的支援加算の単位数は、児童1人、1日あたり187単位です。両方取得できる状況なら、専門的支援加算を優先します。
4-1-2.児童発達支援では一部併用可
児発の「専門的支援加算」の要件は放デイよりも広く、以下の2者が加わります。
- 保育士(児童福祉事業に5年以上従事していること)
- 児童指導員(同)
これら2者は、特別支援加算の要件とはかぶりません。
そのため、児発の事業所では「保育士または児童指導員」で専門的支援加算を取得している場合に限り、特別支援加算も併用できます。
4-2.児童指導員等加配加算との併用
児童指導員等加配加算を取得するときは、併用できる場合とできない場合があります。
「特別支援加算と該当配置専門職がかぶっているかどうか」が見極めのポイントです。放デイ、児発とも内容は共通です。
4-2-1.児童指導員等加配加算と併用可能な場合
児童指導員等加配加算を、
- 児童指導員等
- 保育士
- その他の職員
で取得している場合は、特別支援加算と該当配置専門職がかぶりません。そのため、特別支援加算も併用できます。
4-2-2.児童指導員等加配加算と併用不可能な場合
児童指導員等加配加算を、
- 理学療法士
- 作業療法士
- 言語聴覚士
- 心理指導担当職員
- 国立障害者リハビリテーションセンター学院の視覚障害学科を履修した者など
で取得している場合は、特別支援加算と該当配置専門職が同じです。併用はできません。
両方を取得できる状況ならば、単位数の多い児童指導員等加配加算を優先します。
4-2-3.重症心身型の事業所の場合
重症心身型の放デイ・児発では、人員配置基準に「機能訓練担当職員」が含まれています。
そのため、担当職員の職種と特別支援加算の職種が重なる場合、加算を申請できません。
例)理学療法士が機能訓練担当職員で配置されている場合
・理学療法士が策定した特別支援計画⇒加算対象外
・作業療法士などほかの専門職員が策定した特別支援計画⇒加算可能
重症心身型の施設では、職種が重ならないよう工夫しながら単位を取得すると良いでしょう。
なお、加算の効果的な取得方法は『儲かる放デイにするための人員配置・加算のポイント』で説明しています。あわせてお読みください。
5.特別支援加算と専門的支援加算の違い
特別支援加算とよく似た加算に「専門的支援加算」があります。
本章では両者の違いをはっきりさせ、どのようなときに「特別支援加算」を使うべきか説明します。
5-1.専門的支援加算とは目的が違う
特別支援加算も専門的支援加算も、専門性のある支援への評価であることに変わりはありません。
しかし特別支援加算は専門的支援加算と比べ、前提条件が厳しく準備が大変です。
以下の表で相違点をご覧ください。
特別支援加算 | 専門的支援加算 | |
---|---|---|
加算評価される支援内容 | 特別な支援を要する児童へのサービス(該当児童のみ加算可能) | 専門職員を配置することで、療育全体の質が上がったことを評価(療育を受けた児童の人数分加算が得られる) |
事前準備 | ・該当する児童ごとの特別支援計画を作成
・サービスを提供する部屋や設備の準備が必要 |
・個別支援計画のみでOK
・特別な部屋や設備は不要 |
サービスを提供する職員 | 特別支援計画に基づいていれば、専門職員以外でもサービスを提供可能 | 専門職員のみ対応可能。療育現場に専門職員がいることが評価される |
加算単位数 | 該当児童1人につき1日54単位 | 児童1人につき1日187単位
(児発のみ児童指導員の配置で123単位) ※定員10名以下の事業所のケースを記載しています |
この表からわかるとおり、特別支援加算は、専門的支援を要する子ども一人にスポットを当て、子どもに確実に専門的療育を届けることを目的にしています。
それに対し、専門的支援加算は専門職員を配置することによる質の向上や、きめ細やかな対応に焦点を当てています。
5-2.特別支援加算を使うべき状況
加算単位数からもわかるとおり、通常は専門的支援加算を取得します。しかし、特別支援加算が有効な場面も存在します。
それは、現場に専門職員を配置できない場合です。特別支援加算は「特別支援計画」に基づいた支援さえできれば、サービスを提供する職員の指定はありません。
特別支援計画は作成されているものの、なんらかの事情で専門職員が療育に参加できない場合は、特別支援加算を申請すると良いでしょう。
6.特別支援加算の難しさ
特別支援加算を導入すれば、特定の子どもに質の高い支援を提供しやすくなります。しかし導入には困難な点があるのも事実です。
特別支援加算を導入する最大の難点は、専門職員の確保の難しさでしょう。
たとえば理学療法士の場合、児童福祉施設への就職率はわずか0.6%(※注)に過ぎません。ただでさえ人材が少ない上に、子どものニーズに応じた資格保有者を配置するのは不可能に近いでしょう。
「子どものニーズと、保有する人材がたまたまマッチした場合に特別支援加算を申請する」というのが多くの事業所の実情ではないでしょうか。
また事前に部屋の確保や設備が必要な点も、導入を困難にしています。特別支援加算のニーズが必ずあるとは限らず、事前準備が無駄になる可能性もあるからです。
これらの観点から、特別支援加算はどの事業所でも等しく利用できる加算ではありません。あなたの教室に条件が合致する場合、取得を考えると良いでしょう。
なお、専門職員を含めた人材の効果的な採用方法は、『実は人材不足が倒産要因!安定的に人材を確保する裏技紹介』で紹介しています。ご覧ください。
※注)日本理学療法士協会の2022年3月末時点でのデータから計算
(参照:会員の分布 | 日本理学療法士協会)
さいごに
特別支援加算は、以下の条件に該当する事業所で取得できます。
- 通所する児童の中に、専門職員による機能訓練のニーズがある
- 特別支援のために使える部屋が確保できる
- 理学療法士など、子どものニーズに応じた専門職員が在籍している(または確保する見込みがある)
ただし、加算を申請する場合には以下の点に注意しましょう。
- 加算を取得できる場合は、そちらを優先する
- 児童指導員等加配加算と併用できる場合は併用する。どちらか片方の場合は、児童指導員等加配加算を優先する
これは特別支援加算の単位数が、専門的支援加算や児童指導員等加配加算よりも少ないためです。
これらのことから、特別支援加算にはあまり取得の必要性が感じられないかもしれません。
しかし、「特別支援計画は作成されているものの、なんらかの事情で専門職員が療育に参加できない場合」には効力を発揮します。
内容を理解し、必要なときに申請できる状態にしておくのが賢明です。
こどもプラスは全国に190拠点を有し、日々加盟店様に必要なアドバイスを行っています。そ
の経験をもとに、状況に応じた有効な加算の取得方法をご案内いたします。
現在放デイ・児発の運営に行き詰まっているオーナー様や、これから参入を考えている経営者様は「問い合わせページ」より、ぜひ一度個別面談にお申し込みください。