児童発達支援における食事提供加算の概要と2024年改定ポイント
食事提供加算とは、低所得または中間所得世帯の障害児に対し、事業所内で調理した食事を提供した場合に算定できる加算です。
単なる「給食の提供」ではなく、障害特性に応じた栄養管理や食育を行う体制が評価されます。
2024年度(令和6年度)改定の重要変更点
今回の改定における最大のポイントは以下の2点です。
- 経過措置の延長当初終了予定だった経過措置が「令和9年(2027年)3月31日」まで延長されました。これにより、当面の間は加算の算定が可能です。
- 要件の厳格化と明確化単に食事を出すだけでなく、「栄養士等による献立確認」「食育の推進」「家族への相談援助」など、より専門的な関わりが必須となりました。
【単位数】食事提供加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の違い
食事提供加算は、関わる専門職(管理栄養士か栄養士か)や、家族への指導体制によって2つの区分に分かれます。
| 区分 | 単位数(1日につき) | 必須となる専門職 |
| 食事提供加算(Ⅰ) | 30単位 | 栄養士(または管理栄養士) |
| 食事提供加算(Ⅱ) | 40単位 | 管理栄養士 |
ここがポイント:
(Ⅱ)の方が単位数が高い分、国家資格である「管理栄養士」の配置と、家族向けの研修会開催(年1回以上)などの要件が追加されます。
食事提供加算の算定要件【詳細チェックリスト】
算定には以下の共通要件に加え、区分ごとの要件を満たす必要があります。出前や市販弁当の購入では算定できない点に注意してください。
1. 共通要件(Ⅰ・Ⅱ共通)
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調理環境: 児童発達支援センター等の調理室を使用すること。
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責任の所在: 事業所が自ら調理、または事業所の最終責任下で第三者に委託していること。
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対象者: 低所得者または中間所得者世帯の障害児であること。
2. 区分別の要件比較
| 要件項目 | 食事提供加算(Ⅰ) | 食事提供加算(Ⅱ) |
| 献立の確認・助言 | 栄養士が実施 | 管理栄養士が実施 |
| 個別の配慮 | アレルギー、嚥下機能、嗜好等への配慮 | (左記と同じ) |
| 記録の作成 | 摂取状況、身体的成長(身長・体重)の記録 | (左記と同じ) |
| 食育の推進 | 行事食や調理体験などを計画的に実施 | (左記と同じ) |
| 家族への相談対応 | 食事・栄養相談に応じ、日時・内容を記録 | (左記と同じ) |
| 家族向け研修会 | 必須ではない | 年1回以上開催し情報提供 |
※栄養士の外部連携について
事業所に栄養士がいない場合でも、同一法人の他事業所の栄養士や、保健所・栄養ケアステーション等の外部機関、委託先の栄養士からの指導・助言を受ける体制があれば要件を満たします。
実地指導対策!記録と食育の具体的な取り組み例
実地指導(監査)では、「実際に計画的に行われているか」が厳しくチェックされます。以下のポイントを押さえて記録を残しましょう。
1. 「食育の推進」の具体例
漠然とした記述ではなく、年間計画に以下のようなイベントを組み込みます。
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季節の行事食: 七夕ゼリー、クリスマスメニューの提供。
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調理体験: おにぎり作り、野菜の皮むき体験。
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栽培活動: ミニトマトを育てて収穫し、給食で食べる。
2. 必須となる記録項目
サービス提供記録やケース記録には、以下の項目が網羅されている必要があります。
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提供した献立の内容
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児童ごとの摂取状況(完食、1/2摂取、刻み食対応など)
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アレルギー対応の確認記録
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体重・身長の推移(3ヶ月に1回など定期的に)
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保護者からの相談内容とその回答(「家で野菜を食べない」への助言など)
まとめ
食事提供加算は、単なるコスト補填ではなく「障害児の健全な発育」と「家庭支援」を目的とした重要な加算です。
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期限: 令和9年3月末まで延長。
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区分: 管理栄養士なら(Ⅱ)、栄養士なら(Ⅰ)。
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注意点: 記録がないと返還対象になります。必ず摂取状況や相談内容を文書化してください。
2024年度改定の要件を正しく理解し、適切な運営と請求を行いましょう。
公的な引用・参考文献
正確な情報を確認するために、必ず以下の厚生労働省の一次資料をご参照ください。
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厚生労働省:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
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厚生労働省:障害福祉サービス費等の報酬算定構造・単位数表
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各自治体の障害福祉課または厚生労働省の最新通知をご確認ください。
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