こども性暴力防止法とは?(正式名称と目的)
正式名称
- 学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号)
目的
- 学校、保育所、学習塾など、こどもに接する場での性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守ることです 。
通称
- いわゆる「日本版DBS」と呼ばれる制度を創設する法律です 。
こども性暴力防止法:放課後等デイサービスの重要(義務)な位置づけ
この法律において、事業者は「義務対象」と「認定対象」の2種類に明確に分けられます。
こどもとの関係性における
「①支配性」「②継続性」「③閉鎖性」の3つの観点から判断されます 。
認定対象(任意)
学習塾、スポーツクラブ、放課後児童クラブ(学童)など 。これらは国に申請し「認定」を受けることで、日本版DBSの仕組みを利用できます 。
義務対象(必須)
学校、認可保育所、児童養護施設などと共に、「放課後等デイサービス」(指定障害児通所支援事業)が分類されます 。
事業者が絶対に把握すべきことは、放デイ事業は「認定を受けるかどうか」の選択肢がないということです。法律で定められたすべての措置を講じることが法的に必須となります 。
こども性暴力防止法で事業者(放デイ)に課される「3つの義務」
事業者として、以下の3つの義務を確実に実行する体制を整備しなければなりません。
義務1: 犯罪事実確認(日本版DBS)の実施
事業者は、こどもと接する業務に従事する者(児童指導員、管理者、送迎スタッフなど)について、雇入れ時や配置転換の際に、特定性犯罪の前科がないかを確認することが義務付けられます 。
確認対象となる犯罪(特定性犯罪)
不同意わいせつ 、児童買春 、児童ポルノ所持 、盗撮(性的姿態等撮影) 、痴漢(条例違反) など、法律で定められた性犯罪が対象です。これには成人に対する性犯罪も含まれます 。
確認対象期間
刑の重さにより異なります。
- 拘禁刑(服役):刑の執行終了後 20年
- 拘禁刑(執行猶予):裁判確定後 10年
- 罰金刑:刑の執行終了後 10年
義務2: 防止措置の実施
犯罪事実確認の結果、特定性犯罪の前科があることが判明した場合、事業者は「児童対象性暴力等のおそれあり」との判断の下、その人物をこどもと接する業務に従事させない(配置転換や、場合によっては解雇など)措置を講じる義務を負います 。
義務3: 現職者(既存スタッフ)への対応
この法律は、新規採用者だけを対象としていません 。 放デイのような義務事業者は、法律の施行日(2026年12月25日予定 )から3年以内に、すでに働いている全ての現職者に対しても犯罪事実確認を行う義務があります 。
こども性暴力防止法 施行前から事業者が主導すべき準備(採用・就業規則)
施行は2026年ですが、法施行後に「既存スタッフが確認を拒否する」「性犯罪歴が発覚した職員の配置転換や解雇をめぐり訴訟になる」といった重大な労務トラブルを防ぐため、準備を開始する必要があります 。
1. 採用プロセスの見直し
採用関連書類のひな形を整備し、早めに運用を開始してください 。
募集要項・求人票
採用条件の一つとして「特定性犯罪の前科がないこと」を明記します 。
選考(誓約書の取得)
応募者本人に特定性犯罪歴がないことを「誓約書」などの書面で明示的に確認・申告させます 。
内定通知書
内定取消事由として、「学歴、職歴、犯罪歴その他の重要な経歴の詐称が判明した場合」を必ず記載します 。
2. 就業規則の改定
以下の条項を就業規則に追加・修正し、既存スタッフにも周知徹底することが重要です 。
懲戒事由の追加
以下の内容を懲戒事由として明記します 。
- 「こども性暴力防止法に規定する児童対象性暴力等に該当する行為又はそれにつながる不適切な行為を行ったとき」
- 「学歴、職歴、資格、犯罪歴等の重要な経歴を詐称して雇用されたとき」
義務の明記
職員の服務規律として、「法人の指示に従い、こども性暴力防止法に基づく犯罪事実確認に必要な手続等に対応しなければならない」という義務を明記します 。
こども性暴力防止法に関する公的情報(参考文献)
この記事は、以下のこども家庭庁の公表資料のみを基に作成しました。解釈に関する詳細は、必ず最新の原文および管轄の自治体にご確認ください。
こども家庭庁支援局長通知「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の施行に向けた周知依頼について」