逆さバイバイとは?自閉症との関係性と子どもにできる対処法
バイバイをするとき、手の甲を相手に向ける「逆さバイバイ」をする子がいます。なぜ手の向きが逆さになるのか、原因がわからず心配している保護者様もいらっしゃるでしょう。
逆さバイバイは、発達障がいの一つである自閉スペクトラム症(自閉症)と関連しています。障がい特性により、逆さバイバイをすることがあるのです。
発達障がいは、幼いときから適切な支援を受けることで症状が改善します。特性を理解し、できるだけ早く適切な支援を始めなければなりません。
この記事では逆さバイバイと自閉スペクトラム症の関連性を明らかにします。また自閉スペクトラム症の詳細と、障がいに寄り添う方法も説明します。
自閉スペクトラム症を知り、支援体制を整える参考にしていただけます。
1.逆さバイバイとは?
逆さバイバイとは、幼児がバイバイをするときに手の甲を相手に向ける状態を指す言葉です。違和感があるため、比較的早い段階で気づく人が多いでしょう。
逆さバイバイには、発達障がいの一つである自閉スペクトラム症(自閉症)が関連しています。発達障がいの有無を判断するために、逆さバイバイを引き起こす原因をしっかり理解しましょう。
1-1.逆さバイバイをする原因
逆さバイバイは、体の向きを考えず、相手の仕草をただ真似ることで発生します。
ママが子どもに手を振るとき、手のひらは子どものほうを向いています。手を振られた子どもが見たまま真似すると、手のひらは自分の体を向くことになります。
「ママに手を振り返そう」と思ったとき、正しい手の判断は子どもにとって容易ではありません。ママと同じように手を振るには、ママの目線で考え、身体の向きが逆であることに思い至らなければならないからです。
向かいあう相手の目線に立つには、立場を置き換える想像力が必要です。すべての子どもが、幼児期から豊かな想像力を持てるわけではありません。逆さバイバイになったとしても、不思議はないのです。
1-2.逆さバイバイはいつから始まる?
逆さバイバイは、初めてのバイバイで起こります。正常なバイバイをする子どもが、突然逆さバイバイになることはありません。
一般的にバイバイを始めるのは生後10ヶ月ころと言われます。ただし発育には個人差があるため、1歳を過ぎることもあります。
1-3.「逆さバイバイ=自閉症」じゃない
逆さバイバイは、想像力が培われていない子どもに起こり得る現象です。心身の発達過程で、誰にでも起こり得ます。
ただし子どもが自閉スペクトラム症(自閉症)の場合、定型発達児(健常児)よりも、逆さバイバイになる可能性が上がるかもしれません。なぜなら想像力の未発達に加え、自閉スペクトラム症の特性も原因になるからです。
1-3-1.自閉スペクトラム症と逆さバイバイ
自閉スペクトラム症児は、他人の立場で物事を考えるのが苦手です。
バイバイをするときにも、相手の目線で手の向きを考えられないため、逆さバイバイをしがちです。
子どもの想像力は成長とともに培われます。発育に従って相手の立場を想像できるようになり、逆さバイバイをしなくなります。
しかし自閉スペクトラム症児は、成長しても他人の立場でものを考えるのが苦手です。逆さバイバイをいつまでも続けるようなら、自閉スペクトラム症を疑ってみましょう。
1-3-2.逆さバイバイは定型発達でも起こり得る
初めてのバイバイでは、定型発達児でも逆さバイバイが起こり得ます。相手の視点に立つ想像力が身につかず、見たままを真似てしまうからです。
したがって、逆さバイバイを見てすぐに自閉スペクトラム症を疑うのは早計です。いつまでも改善の兆しが見られず、ほかにも自閉スペクトラム症の症状があるなら、障がいを疑うべきでしょう。
1-3-3.逆さバイバイがすぐに治った例も
定型発達児の逆さバイバイは長続きしません。親が正しいバイバイを教え、「バイバイは手のひらを相手に向けるもの」と固定観念ができれば、成長を待たなくても改善されるからです。
初めてのバイバイが逆さバイバイだったら、実際に手を持ち教えることで、正しいバイバイを習得できるでしょう。
2.逆さバイバイの原因になる自閉スペクトラム症(ASD)
逆さバイバイの原因になる自閉スペクトラム症(ASD)の詳細を説明します。
逆さバイバイは定型発達児でも起こり得ます。逆さバイバイだけを根拠に自閉スペクトラム症を断定できません。
自閉スペクトラム症には、さまざまな症状があります。年齢ごとに現れやすい特性を理解し、多角的に障がいを判断しましょう。
2-1.自閉スペクトラム症(ASD)とは
自閉スペクトラム症(ASD)は、発達障がいの一つです。
以前は特性やことばの遅れの有無で、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障がい」などに細分化されていました。2013年以降、「自閉スペクトラム症(ASD)」とまとめて表現されています。
自閉スペクトラム症(以下、ASD)はほかの発達障がいと同様、生まれながらの脳機能障がいです。治療法は研究されているものの、現在の医学では根本的な治療は困難です。
しかし、できるだけ早く障がいを発見し適切な支援を受ければ、障がいの多くは緩和されます。まずはASDの知識をつけ、周囲の大人が障がいに気づくことが重要です。
2-2.自閉スペクトラム症(ASD)に共通する特徴
ASD者に共通する特徴は以下のとおりです。
- 会話やコミュニケーションが苦手で、良好な人間関係を構築しにくい
- 場の空気を読むことが難しく、社会性に問題を抱える
- 五感のいずれかが過敏になり、感覚が偏りがち
- こだわりが強く、法則や規則に従って行動したがる
- 運動や細かな作業が苦手
人間関係や社会性に問題を抱えがちな特性から、ASD者は集団生活に支障をきたします。できるだけ早く支援を受けられる体制を整えれば、生活への不安が減ります。
2-3.年齢とともに現れやすい特徴
ASDには年齢ごとに現れやすい特徴があります。
赤ちゃんのときから、定型発達児とは異なる部分があり、親が「あれ?」と感じることが多々あるのです。逆さバイバイも1歳前後で違和感を持つ事例です。
未就学児は本人が困難を感じる機会が少ないため、親がいかに早く障がいに気づき、対策するかがポイントです。年齢ごとの特徴を理解し、気になれば早めに専門家に相談しましょう。
2-3-1.ASDの特徴(赤ちゃん~1歳ころ)
赤ちゃんの成長は個人差があるため、「〇〇の症状があるからASD」と断定はできません。
しかし徴候があるなら精神発達相談を受け、心理相談員に意見をもらうと良いでしょう。精神発達相談は自治体で受けられます。
生後10ヶ月~1歳ころに現れるASDの症状は、以下のとおりです。
- 母を目で追わない
- 人がいても顔を向けない
- 母の顔を見ても笑わない
- 人見知りをまったくしない
- あやしても喜ばない
- 音に反応しない
- 他人といるより一人のほうが機嫌が良い
- おもちゃへの興味が少ない
- 抱っこを嫌がる
- 睡眠が不規則
- 喃語が少ない
2-3-2.ASDの特徴(2歳~3歳ころ)
徐々に自我が芽生えてくる2歳〜3歳は、ASDらしい特徴が現れ始める時期です。
保育園に通園している子どもは、周りとの違いが目立ち始めます。3歳児健診で対人・コミュニケーションの遅れを指摘されることもあります。
少しでも「おかしいな」と思ったら、早めの相談が重要です。2歳〜3歳ころ現れるASDの症状は、以下のとおりです。
- ことばを話さない(ことばの発達が遅い)
- 独特の喃語のような声を出す
- 相手の口元をじっと見る
- 家具やおもちゃの位置が一定でないと気がすまない
- 同じことを何度も繰り返す
- 行動に儀式めいた決まり事が増える
- 予期せぬ出来事にパニックを起こす
- 偏食で、新しい食べ物を受け付けない
- 一人遊びが中心
- 抱っこを喜ばない
- 要求があるときは相手の手を引っ張る
2-3-3.ASDの特徴(4歳~5歳ころ)
発達障がいは就学前の5歳までに診断を受け、支援体制を整えると良いでしょう。
小学校に入ると集団生活が始まり、友人関係や学業に困難を感じやすいからです。
5歳児健診は自治体の任意実施のため、実施されない自治体もあります。親が障がいに気づき、支援体制を固めることが重要です。
4歳〜5歳ころ現れるASDの症状は、以下のとおりです。
- ダメと言われてもやめられない
- ルールを守れない
- 一つのことを始めると終わらせるのが難しい
- 特定のものに強い愛着とこだわりを示す
- 友達の輪に入れない
- 希望が叶うまで主張を続け、叶わないとかんしゃくをおこす
- 気持ちを切り替えられない
(参照:<論文>連絡帳に見る自閉スペクトラム症児の生きる様と周囲他者との関わり | 京都大学学術情報リポジトリKURENAI 頼小紅)
<関連記事>
3.逆さバイバイの治し方はある?4つの対策を紹介
お子様が逆さバイバイをしたとき、治し方はあるのでしょうか。どのような対策すべきか4つのポイントから説明します。
- 自閉スペクトラム症か慎重に見極める
- 発達に問題がないなら繰り返し教える
- 自閉スペクトラム症の場合は専門家に相談を
- 自閉スペクトラム症の改善には療育が効果的
発達障がいの相談機関や、心身の成長を促す療育の詳細もお伝えします。
3-1.自閉スペクトラム症か慎重に見極める
お子様が逆さバイバイをした場合、最も重要なのはASDの見極めです。ASDの特性を理解し、お子様の症状を多角的に判断しましょう。
逆さバイバイ以外にASDの症状がない場合、成長とともに治る可能性があります。
お子様の年齢が低いほど、発達障がいの判定は困難です。心身が未熟で、定型発達児でも起こり得る症状が多いためです。初めての子育てでは、お子様の異常に気づけないこともあります。
ASDの不安を感じるなら、自治体で精神発達相談を申し込みましょう。心理相談員や保健師から客観的な意見をもらえます。また必要に応じて、専門施設や病院も紹介してもらえます。
3-2.発達に問題がないなら繰り返し教える
ASDの症状がないなら、時間とともに逆さバイバイをしなくなります。
逆さバイバイは相手の視点に立てないことから起こります。成長により相手の視点に立つ想像力を獲得すれば、自然と症状が収まります。
また繰り返し正しいバイバイを教えることでも改善されます。「バイバイはこうやるもの」と認識ができ上がるからです。
一度でやめられない場合は、繰り返し教えましょう。想像力の獲得を待つよりも、症状が早くなくなります。
3-3.自閉スペクトラム症の場合は専門家に相談を
ASDが強く疑われる場合は、早めに専門家に相談します。相談先は地域の発達障がい者支援センター、児童発達支援センターです。
ASDは根本的な治療ができないものの、特性にあった環境を整え、個性に寄り添う支援を行えば、症状が緩和されます。
3-3-1.発達障がい者支援センターで医療機関を紹介してもらう
発達障がい者支援センターは、発達障がいがある人を支援する施設です。
都道府県や指定都市が運営母体になる場合と、自治体指定の社会福祉法人、特定非営利活動法人が運営する場合があります。
発達障がい児と家族からの幅広い相談に応じており、必要に応じて知的発達や生活スキルの心理検査も受けられます。
ただし、発達障がいの診断を下すのは医療機関です。近隣の病院を紹介してもらえるので、相談後は病院を受診しましょう。
医師からの診断が下りた後は、地域の療育施設(心身の発達を支援する施設)の紹介をお願いしましょう。センターのスタッフが、具体的な支援計画を作成してくれることもあります。
3-3-2.児童発達支援センターは発達障がい児の強い味方
児童発達支援センターは、地域の中核を担う療育施設です。
未就学児を対象に療育や相談支援を行っています。通所する児童だけでなく、未就学児を持つ家庭からの相談にも応じるのが特徴です。
近隣の病院の紹介はもちろん、障がいが確定した後の支援方針や家庭での療育方法も相談できます。
なお、児童発達支援には、一般の「事業所」と地域の中核となる「センター」があります。家庭からの相談に広く応じるのは、児童発達支援「センター」です。
まずは児童発達支援センターで相談し、療育に取り組む場合は近隣の児童発達支援事業所に通所するのが一般的です。
3-4.自閉スペクトラム症の改善には療育が効果的
ASDの改善に役立つのが療育です。
療育は家の近くの児童発達支援事業所(またはセンター)で受けられます。障がい特性や発達段階、個性にあわせた療育を受ければ、ASDの症状が緩和されます。
3-4-1.療育とは
療育とは障がいがある子どもへの医療的・教育的支援です。のびのびと心身を成長させながら、自立や集団生活に必要な力を獲得します。
支援内容は
- 運動遊び(軽い運動を伴う遊び)
- 創作活動
- ことばのトレーニング
- ビジョントレーニング(見ることに関連する機能の向上)
などさまざまです。
事業所ごとに特色があるため、障がい特性や個性にあう事業所を選択しましょう。
未就学児の療育は児童発達支援事業所(センター)で、小学生〜高校生は放課後等デイサービスで受けられます。
3-4-2.未就学児の療育は児童発達支援事業所で受けられる
本未就学児の療育は家の近くの児童発達支援事業所(センター)で受けられます。
支援を受けるには、自治体から交付される受給者証が必要です。受給者証があると、療育を1割負担で受けられます。(9割は自治体が負担してくれます)
年間所得890万円までの世帯なら、どんなに利用しても利用料は4,600円が上限です。
利用にさいしては、自治体から障がい状況や生活状況などの聞き取り調査があります。医師からASDの診断が下りていれば、審査にとおりやすいでしょう。
交付される受給者証には、1ヶ月あたりの利用日数上限が記されています。利用日数の上限は、審査情報をもとに決定されます。
3-4-3.こどもプラスの支援内容
こどもプラスは全国で児童発達支援事業を展開しています。
弊社の特色は、脳科学にもとづいた運動療育です。遊びながら軽い運動を行い、心身の発達を促進します。
- 箸を持つ、ボタンを留めるといった日常動作の向上
- 身体の不器用さの克服
- 集団活動のルール習得
などさまざまな効果が期待できます。
もちろん、障がいの特性や個性にあわせ、ことばの学習やビジョントレーニングも取り入れています。お子様に本当に効果的な支援はなにか考え、サービスが一律にならないよう工夫しています。
さいごに
幼児が逆さバイバイをするのは、相手の手の動きをただ真似ているからです。
相手の立場でものを考えられないのは、自閉スペクトラム症(ASD)の特質です。しかし幼児は心身の発達過程のため、相手の視点に立つ想像力が培われていない可能性もあります。逆さバイバイだけでは、ASDの判断はできません。
重要なのは、ASDの見極めです。年齢ごとに現れやすい特徴を理解し、多角的にお子様の状態を判断しましょう。
ASDが疑われる場合、相談先は地域の発達障がい者支援センター、児童発達支援センターです。病院を紹介してもらい、医師から障がいの診断を受けます。
ASDは医療で治るものではありません。しかし本人が生活しやすい環境を整え、適切な支援を受ければ、症状が緩和されます。できるだけ早く周りの大人が症状に気づき、支援体制を整えることが大切です。
こどもプラスでは発達障がいがあるお子様(未就学児~高校生)に療育を提供しています。
日常生活で困難を感じる部分を改善し、必要な力を培います。個性にあわせたプログラムで、一人ひとりの発達を促進します。
楽しく身体を動かす運動遊びを中心に、学習支援や課外活動も積極的に取り入れています。お子様が自主的に活動していけるよう、日々工夫して活動しています。
こどもプラスの教室は全国にあります。ご興味をお持ちの保護者様は「こどもプラス」の保護者向けサイトをご覧ください。
また、こどもプラスでは新規フランチャイズ店を随時募集中です。
障がいのある子ども達と家族を支える教室を、私たちと一緒に作り上げませんか?
ご興味のある経営者様は、下記連絡先までお問いあわせください。