事業所間連携加算と保育・教育等移行支援加算の違い
最初に整理しておきたいのが、名前が似ている連携系の加算との違いです。
「移行支援」を正しく算定するために、まずは除外すべき加算を理解しましょう。
| 加算名 | 目的・対象 | タイミング |
| 事業所間連携加算 | 児発と放デイなど、事業所同士が連携して支援の整合性を図る | 併用期間中 |
| 関係機関連携加算 | 学校や医療機関等と連携・会議を行う(継続利用が前提) | 利用期間中 |
| 保育・教育等移行支援加算 | 退所して保育所や幼稚園等へ移るための支援を行う | 退所前後 |
本記事で解説するのは、一番下の「卒業(退所)」に伴う支援に対する評価です。
保育・教育等移行支援加算とは?(令和6年度改定のポイント)
これまでは「退所後の居宅訪問」のみが対象でしたが、令和6年度より「退所前の準備」や「退所後の訪問先への助言」も評価対象となりました。
これにより、インクルージョン(地域社会への参加)を推進する事業所が、より正当な評価を受けられる仕組みになっています。
対象となるサービス
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児童発達支援
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放課後等デイサービス
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(および各共生型サービス)
3つの算定要件パターンと具体的なアクション
今回の改定で、算定できるパターンは以下の3つになりました。
いずれも「個別支援計画への位置づけ」と「保護者の同意」が必須です。
① 退所前の移行支援(新設)
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時期: 退所前6ヶ月以内(最大2回まで)
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内容: 移行先(保育所等)との会議、または訪問による助言。
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ポイント: 移行先に対して、子どもの特性や配慮事項を伝え、スムーズな受け入れ体制を整えること。
② 退所後の居宅訪問(既存)
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時期: 退所後30日以内(1回のみ)
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内容: 利用者の自宅を訪問し、相談援助を行う。
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ポイント: 新しい生活環境での困りごとがないか確認する。
③ 退所後の施設訪問(新設)
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時期: 退所後30日以内(1回のみ)
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内容: 移行先(保育所等)を訪問し、定着のための助言を行う。
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ポイント: 実際に通い始めた後の「想定外のトラブル」等の相談に乗る。
加算単位数と収益シミュレーション
【算定の最大パターン例】 1人の児童が、慎重に移行支援を行い退所した場合:
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退所前: 保育所と会議(500単位)
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退所前: 担任の先生へ具体的な介助方法を伝達(500単位)
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退所後: 移行先の保育所へ様子を見に行く(500単位) 合計:1,500単位 × 地域単価(例:10円) = 15,000円
これまで無償で行っていた丁寧な引き継ぎ業務が、収益として評価されます。
ここが落とし穴!算定できない「対象外」のケース
非常に重要な注意点として、移行先が以下の場合は算定できません。
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小学校・中学校・特別支援学校への入学(学校教育法第1条に規定する学校 ※幼稚園は除く)
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病院への入院
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別の障害児通所支援事業所への転所
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障害児入所施設への入所
あくまで「保育・教育等」への移行であり、義務教育課程への進学(就学)は対象外となる解釈が一般的です(※指定権者により解釈が異なる場合があるため要確認)。
対象となるのは主に「保育所」「認定こども園」「幼稚園」などです。
実地指導対策:必ず残すべき記録項目
加算を算定する場合、必ず「支援の記録」を残す必要があります。実地指導で返還を求められないよう、以下の要素を網羅した記録を作成してください。
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実施日時・場所(例:〇月〇日 〇〇保育園にて)
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対応者(自事業所の職員名と、先方の担当者名)
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内容の要点
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共有した本人の特性(パニック時の対応、食事の介助方法など)
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先方からの質問事項と回答
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今後の課題と対策
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プロセスの記録
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保護者の同意を得た日
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個別支援計画書の変更・交付日
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まとめ・公式資料
保育・教育等移行支援加算は、子どもが地域の中で育っていくための架け橋となる重要な業務を評価するものです。要件を正しく理解し、漏れなく算定を行いましょう。
【公的な引用・参考文献】 実務にあたっては、必ず最新の行政資料をご確認ください。
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こども家庭庁: 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要
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厚生労働省: 障害福祉サービス等報酬改定について
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特に「障害児支援関係」の「留意事項通知」を参照