子育てサポート加算の本質
この加算が目指すのは、連絡帳の文字や送迎時の短い会話だけでは伝わらない、支援の「なぜ?」を保護者と共有することです。
例えば、お子様がパニックになりかけた時、支援員がどのような言葉を選び、どのような距離感で落ち着きを促したか。
その一連の専門的な関わりを、保護者がその場で共に体験し、支援の意図をリアルタイムで理解することに本質的な価値があります。
これは、支援の様子を一方的に見せる「見学」ではなく、事業所と家庭が同じ場面を共有し、お子様への理解を深める「共体験(Co-Experience)」と捉えることで、より意義のある取り組みとなります。
子育てサポート加算の体制構築:鍵となる「役割分担」
この加算の算定要件で最も特徴的なのが、「支援と相談の同時並行」です。
これを実現するためには、職員の明確な「役割分担」が不可欠です。
公式Q&A(VOL.6 問1)で示されている通り、「支援終了後のまとめ面談」は算定できません。
つまり、支援時間内に以下の2つの役割を同時に機能させる体制を組む必要があります。
- 支援担当者: 目標達成に向けた支援プログラムの提供に専念し、お子様と深く関わります。
- 相談担当者(コーディネーター役): 保護者の隣で、支援担当者の関わりやお子様の反応を「通訳」する役割を担います。例えば、「今のは、〇〇くんが気持ちを切り替えるための意図的な『待ち』なんですよ」といった解説を加え、保護者の気づきを促し、質問に答えます。
この相談担当者は、経験豊富な児童発達支援管理責任者などが担うことで、より専門性の高い対話が可能です(Q&A VOL.6 問4)。
子育てサポート加算の実践計画:効果的な「場面設定」の方法
保護者の負担を考慮し、長時間の観察を求めるのは現実的ではありません。そこで重要になるのが、個別支援計画における効果的な「場面設定」です。
公式Q&A(VOL.6 問2)では、あらかじめ保護者と相談し、加算の目的達成に最も適した場面(活動)に絞って計画的に実施することが認められています。計画を立てる際は、以下の視点を取り入れると効果的です。
- 保護者の困りごとから逆算する: 「家でかんしゃくが起きた時にどう対応すれば…」という悩みがあれば、「気持ちの切り替え」をテーマにした活動場面を設定します。
- 子どもの得意を伸ばす場面を共有する: 課題場面だけでなく、お子様が活き活きと活動し、得意なことを伸ばしている姿を共有することも、自己肯定感を育む上で非常に重要です。
なお、場面を絞って実施する場合でも、30分以上の時間を確保することが必須要件です。
子育てサポート加算の基本要件と留意点
改めて、算定に必要な基本ルールと注意点を整理します。
- 計画と同意: 個別支援計画に位置付け、保護者の同意を得る必要があります。
- 記録: 実施日時や支援内容の要点を記録します。
- 実施場所: 事業所内での対面実施が原則です。オンライン等の遠隔での参加は算定できません(Q&A VOL.6 問3)。
- きょうだい児の算定: きょうだいが同日に利用する場合、それぞれの児童の特性について個別に相談援助を行えば、各児童について算定が可能です(Q&A VOL.1 問33)。
- 他加算との関係: 本加算を算定している時間帯に、重ねて「家族支援加算」を算定することはできません。
さいごに
令和6年度の報酬改定で新設された「子育てサポート加算」は、単に業務が増えるということではなく、これまでの家族支援を一歩先へ進め、事業所と保護者の連携の質を大きく向上させるための重要な仕組みです。
参考:こども家庭庁支援局障害児支援課
令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(障害児支援関係) 改定事項の概要