放課後等デイサービスや児童発達支援事業所の経営者・管理者の皆様へ。
「福祉専門職員配置等加算」について、
「制度が複雑でよく分からない」
「令和6年度の改定で何が変わったの?」といったお悩みはありませんか?
この加算は、算定できれば事業所の収益向上だけでなく、支援の質と専門性をアピールし、保護者や地域からの信頼を獲得する強力な武器となります。
この記事では、数多くの事業所をサポートしてきた専門家の視点から、令和6年度の最新情報に基づき、福祉専門職員配置等加算の全てを、どこよりも分かりやすく解説します。
福祉専門職員配置等加算の令和6年度改定ポイント
今回の報酬改定で、福祉専門職員配置等加算は大きく見直されました。最大のポイントは、評価する専門職の種類がより明確になったことです。
加算の区分 | 主な評価ポイント(令和6年度改定後) |
---|---|
加算(Ⅰ) | 福祉系の国家資格者(社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師)を常勤専従で配置 |
加算(Ⅱ) | リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など)を常勤専従で配置 【←新設・注目!】 |
加算(Ⅲ) | ①福祉系国家資格者を常勤換算で25%以上配置 ②勤続3年以上の児童指導員・保育士などを常勤換算で30%以上配置 |
特に、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)などを評価する加算(Ⅱ)が明確に区分されたことで、リハビリに強みを持つ事業所が評価されやすくなりました。
福祉専門職員配置等加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の選び方|要件・単位数を徹底比較
自事業所に最適な加算はどれか、以下の比較表で一目で確認しましょう。
加算の区分 | 単位数 | 対象資格 | 配置要件 | こんな事業所に |
---|---|---|---|---|
加算(Ⅰ) | 15単位/日 | 社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師 | 対象資格者を常勤・専従の直接支援職員として1名以上配置 | 心理・福祉の専門性を軸に、個別支援計画やケースワークを強化したい事業所 |
加算(Ⅱ) | 12単位/日 | 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士、義肢装具士 | 対象資格者を常勤・専従の直接支援職員として1名以上配置 | 身体機能やコミュニケーション訓練など、専門的な療育プログラムを強みにしたい事業所 |
加算(Ⅲ) | 10単位/日 | ①社会福祉士、精神保健福祉士、公認心理師 ②児童指導員、保育士 |
①対象資格者を常勤換算で直接支援職員の25%以上配置 ②勤続3年以上の対象資格者を常勤換算で直接支援職員の30%以上配置 |
経験豊富な職員が多く、チーム力で安定した支援を提供したい事業所。または多様な働き方の有資格者を活用したい事業所 |
福祉専門職員配置等加算の計算方法「常勤換算」をマスター
加算額のシミュレーション
加算額は以下の式で計算します。
- 月間加算額 ≈ 1日の加算単位数 × 月平均利用児童数 × 営業日数 × 地域区分単価
【例】定員10名、月22日営業、地域区分10円の事業所が加算(Ⅰ)を算定した場合 15単位 × 10名 × 22日 × 10円 = 月額 33,000円
「常勤換算」をマスターしよう
加算(Ⅲ)の鍵となる「常勤換算」。
これは「全職員の総労働時間を、事業所の常勤職員が働くべき時間で割る」ことで計算します。
【例】常勤が週40時間の事業所
- Aさん(社会福祉士/常勤):週40時間
- Bさん(児童指導員/勤続5年/非常勤):週25時間
- Cさん(児童指導員/勤続1年/非常勤):週15時間
全直接支援職員の常勤換算数
(40時間 + 25時間 + 15時間) ÷ 40時間 = 2.0人
加算(Ⅲ)要件②の判定(勤続3年以上)
対象はAさん(※)とBさん ⇒ (40時間 + 25時間) ÷ 40時間 = 1.625人 割合:1.625人 ÷ 2.0人 = 81.25% ⇒ 30%以上なので、加算(Ⅲ)の算定が可能です。
※常勤職員も勤続年数の計算に含めます。
福祉専門職員配置等加算の申請から算定までの4ステップと注意点
要件の確認と計画
自事業所の職員状況を洗い出し、どの加算を目指すか決定する。
書類の準備
指定権者(市区町村)のHPを確認し、「体制等に関する届出書」や「勤務形態一覧表」、資格証のコピーなどを準備する。
届出の提出
決められた期日(例: 算定開始したい月の前月15日)までに必ず提出する。
運用の徹底
職員の退職や異動で要件を割らないよう、毎月必ず職員配置を確認する。
要件を満たさなくなった場合は、速やかに加算の取り下げ届を提出する必要があります。
福祉専門職員配置等加算に関するQ&A
- Q1. 職員が辞めてしまい、月の途中で要件を満たせなくなりました。
A1. 残念ながら、その月は加算を算定できません。1日でも要件を満たさない日があれば、月全体で算定不可となるのが原則です。速やかに取り下げ届を提出しましょう。
- Q2. 処遇改善加算との関係は?
A2. 福祉専門職員配置等加算の取得は、「福祉・介護職員等特定処遇改善加算(Ⅰ)」を算定するための前提条件の一つです。もし本加算を取り下げると、特定処遇改善加算(Ⅰ)も算定できなくなるため、職員の給与に大きく影響します。非常に重要な関連性ですので、必ず覚えておいてください。
- Q3. 自治体によってルールが違うって本当?
A3. はい。届出の様式や提出期限、兼務に関する解釈などが異なる場合があります。計画段階で必ず事業所の指定権者である自治体の障害福祉担当課に確認してください。
福祉専門職員配置等加算を事業成長のエンジンにする方法
福祉専門職員配置等加算は、単なる収益増のための制度ではありません。
- 専門職の確保による支援の質の向上
- 「専門家がいる」という保護者への安心感と信頼の醸成
- 職員の定着と安定した事業運営
これらのメリットを通じて、地域で選ばれる事業所になるための戦略的な一手です。制度は複雑ですが、正しく理解し活用すれば、そのリターンは計り知れません。